25.11.13音が紡ぐ女王ステと王ステの歴史

思いだす

hoto-D:それに、曲数も多いので「こんな曲あったな」「ああ、これいい曲だな」と再認識することがあります。そうして自分の過去の曲から影響を受ける、自分が自分に影響を受けるという体験は、振り返らないと出てこないですね。

 

アセビカンナ:過去の自分から何かをもらえるという素敵な体験ですね。さあ、これからの女王ステ、王ステの話になりますが、直近では女王ステが10月初旬に「女王旋律」となります。今まで、例えば「星」や「花」といったテーマがありましたが、今回は「旋律」ということで、音楽自体がテーマになるという点で、hoto-Dさん的には気合の入り方もいつも以上に強いものがあるのでしょうか?

 

hoto-D:そうですね、気合というより恐怖ですね。「これはもう音楽を聴かれるぞ」と。でも、内容はまだ全然未知で、「女王旋律」という言葉だけの段階から作り始めていたので、何を作ればいいのだろうと結構悩んでいました。

 

アセビカンナ:主人公としては、シリーズを通して出ている”アン”が出てくるというわけですけれども。

 

hoto-D:そうですね。1910年代のアンというイメージが最初に与えられて、そこから膨らませていくことになりました。

 

アセビカンナ:時代背景としては、ある意味「女王幻想歌劇」とほとんど同じ時代設定ですよね。今まではフランスやオランダが舞台でしたが、一方で今回はドイツが舞台です。こうした時代背景は、やはり意識されていますか。

 

hoto-D:時代背景は一応意識していますね。時代背景に加えてシリーズの中での作品の前後関係も考慮しつつ制作しています。特にアンについては、作品を通してのアンの気持ちの移り変わりを絶対に意識しなければいけないと思っています。

 

アセビカンナ:キャラクターたちの心情の移り変わり、つまり「この時こう感じるだろうから、逆算するとこの時にはこういう感情になっている」というようなことですね。

 

hoto-D:多少後付けではありますけど、そんなことを意識しております。

 

アセビカンナ:なるほど。さあそして王ステに移りますが、12月に「虚の王」がありますが、 こちらはいかがでしょうか?

 

hoto-D:完全にノープラン!何もないです。

 

アセビカンナ:“虚ろ”っていう今までにないワードですよね

 

hoto-D:まだ吉田さんから具体的なイメージが来ていないので、勝手なイメージですが、「うつろ」という言葉に対しては、ぼんやりしたイメージがありますね。パンチ力がなくなりそうですけど、(笑)

 

アセビカンナ:「虚ろ」というのは、「虚無」や「虚空」という言葉があるくらい、空っぽなイメージですし、何もない状態を、表現としてそこに存在させなければならないというのは、かなり矛盾したことですよね。

 

hoto-D:無音の曲を作った人がいましたが、 あんな感じですか…?(笑)

 

アセビカンナ:舞台で見せなければいけない以上、難しそうですね(笑)そして、年明けには王ステライブⅡがありますが、前回の王ステライブを受けて「次はこうしたい」というアイデアや、王ステライブでやらなかった曲、あるいは『黄昏の王』や『葬列の王』で使用した曲をライブで披露する場合、こういう風にしたいという構想はあるのでしょうか。

 

hoto-D:激しい曲もあるので、そういった曲は舞台のときよりも音をバチバチに、いかつくしたいというか、ライブならではのパンチ力を出したいと思っています。会場は広いので、ホール的には体に直接響く感じではないかもしれませんが、なるべく体で感じられるような音作りはしたいですね。

 

アセビカンナ:確かにライブっていうのはただ聞くだけじゃないですからね

 

hoto-D:あと、劇中でも手拍子をしてもらったり盛り上がるシーンがありますが、そういう場面を存分に楽しんでもらえるようにしたいですね。スタンディングでやれたらさらに良いなと思っています。

 

アセビカンナ:ありがとうございます。それではシリーズ全体ではなく、楽曲作りのスタンスについてもう少し深掘りしてお聞きしたいと思います。楽曲制作の順番は、作詞の吉田さんが先にされるのか、hoto-Dさんが曲を作った後に詩を書くのか、あるいは同時進行なのか、そのあたりのバランスはどのような感じですか。

 

hoto-D:今までの作品はすべて曲が先ですね。僕がメロディーを作ってから、そのメロディーに吉田さんが歌詞を当ててくれる形です。文字数などもある程度合わせながら、多分吉田さんは本を書きつつ「こういうことを歌いたい」というイメージを持っていると思いますが、文字を当てはめるのは後からです。ただ、今回の『女王旋律』は初めて歌詞が先でした。違いを感じるかどうかは、見た人に聞いてみたいですね。

 

アセビカンナ:吉田さんの中で、書きたい内容や歌詞のイメージがあったということですよね。

 

hoto-D:そうだと思います。この間の王ステで吉田さんが作曲した曲が一曲あったのですが、そこで自分のはめたいメロディー感や言葉の感覚を見つけたのではないでしょうか。見つけたというより、やってみたいと思ったのかもしれません。別の現場では、歌詞が先のケースもごく稀にあるそうで、「ちょっとやってみたいですね」となり、詩を先にすることになりました。詩を先にすると、定型から外れたり、スケールが外れることも結構あるので、面白いといえば面白いんですよね。

 

アセビカンナ:確かに曲先行はある程度自由に作れる部分もありますが、歌詞が先にある場合は、その歌詞に曲をはめなければならず、そこからまた新たな発見が生まれるという面がありそうですね。

 

hoto-D:確かにありますね。ただ、言葉があるとその言葉に合うメロディというのは結構あるんですよ。日本語の抑揚に合わせて、高低の揺れ幅で言葉が伝わりやすいメロディになることも多く、詞が先にあるとその点では作りやすいですね。

 

アセビカンナ:より言葉を生かすようなメロディーになるということですね。

 

hoto-D:ただ、ワンセクションが長くなるというか言葉が終わるまで同じメロディを繰り返さない傾向があったりと、歌い手側は覚えるのが難しいかもしれないです。一概にはわかりませんが、挑戦かもしれません。

 

アセビカンナ:ある意味実験の繰り返しみたいなものですね。

 

hoto-D:そうですね。同じものを作ってもしょうがないし常に新しい自分でいたいです。

 

アセビカンナ:同じことを吉田さんもおっしゃっていましたね。やはり、一度やったことは繰り返したくないという気持ちがあって、常に過去の自分との戦いのような意識で取り組んでいると話されていました。

 

hoto-D:確かに難しいですね。もちろん「あの感じをもう一度見たい」という方もいらっしゃるでしょうけれど、僕たちはそこにとどまっているわけにはいかないんです。

 

アセビカンナ:素敵ですね。hoto-Dさんは作曲の際に何か決まったルーティーンなどはあるのでしょうか。

 

hoto-D:特別なことよりも、日々の普通の生活がルーティンみたいな感じですね。生活の中でボイスメモにメロディーやリズムのパターンを録って、制作を始めることが多いですね。アイデアがある程度出てこない限りは、無理にパソコンに向かわないようにしています。ベッドの上でぼーっとして過ごす日もありますし、出てくるまで寝ていることもあります。昔はそれにお酒を合わせてインスピレーションを刺激していましたが、最近は酒を飲むとやる気がなくなってしまうことに気づき、やめました(笑)

 

アセビカンナ:作ろうと気合を入れて何かを作るというよりも、本当に何気ない瞬間にふっと湧いてくるものを大切にする、というスタンスなんですね。

 

hoto-D:そうですね。作曲作業自体は経験や慣れからスムーズに進められる部分も多く、主題が決まれば肉付けやアレンジは比較的自動的に出てくるんです。しかし、最初のひらめきや「これだ!」というイメージがなければ進めるのも面白くないし、感動も生まれないので作曲の本当のスタートは、初めのひらめきにあると思います。

 

アセビカンナ:ある種のヒラメキの部分と制作作業というのは、切り離されているということなのですね。

 

hoto-D:そうですね。徐々にそうなっていったといいますか、今はそういうやり方になっています 。

 

アセビカンナ:さあ、そろそろお時間も迫ってきましたので最後に伺いたいのですが、この先の女王ステ、王ステシリーズで、hoto-Dさんご自身の中で「こういう曲をやりたいな」といったアイデアはあったりしますか?

 

hoto-D:そうですね、「屍の王」の時にはオーケストラに挑戦した経験もあったので、その延長というか、3部・4部合唱とかクラシカルな要素、オペラだったりの芸術的な方向に挑戦してみたいと思っています。

 

アセビカンナ:なるほど。今の音楽というよりは少し古典的なイメージですね。

 

hoto-D:古典的なものを、自分なりの解釈で表現してみたいですね。年を重ねて経験を積んできたこともありますし、周りにしっかり音楽ができる人が増えてきたので、そういう人たちの影響もあって「しっかり音楽をやりたいな」と思うようになりました。作曲という意味でも、決して“高度”かどうかを比べるわけではないですが、一般的に難解だと言われる音楽にも挑戦してみたい、という気持ちはあります。

 

アセビカンナ:時代的に言うと中世ヨーロッパだったりで、女王ステや王ステが一番象徴的な時代ですね!

これからの女王ステ・王ステシリーズの楽曲がますます楽しみです!

本日はありがとうございました。

 

hoto-D:ありがとうございました。

 

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音楽と作品に真摯に向き合いながら常に新たな可能性を求め進化を続けるhoto-D。彼が生み出す名曲たちがこれからも女王ステ・王ステシリーズを華麗に、力強く彩っていくことだろう。

 

Text and Interview by アセビカンナ

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