25.5.24【第3章】吉田武寛の創作スケッチ

語りあう

第3章:創作の現在地と未来

― 音楽、脚本、そして次なる野望へ ―

創作の現在地と未来 ― 音楽、脚本、そして次なる野望へ

演劇作品の中に組み込まれた楽曲の数々は、もはや『女王ステ』『王ステ』を語るうえで欠かせない存在となった。作詞を手がけ、hoto-Dとの共作によって数々の名曲を生み出してきた吉田。その裏側には、緻密な物語構成、キャラクターごとの楽曲設計、そして舞台全体を貫く“時間配分”の工夫がある。

本章では、吉田が自ら作曲にも挑戦しようとする現在の挑戦、さらには“悲劇”というジャンルにかける思い、観客との“対話”としての演劇のあり方、そして『王ステ』『女王ステ』の最終章に向けた展望について語ってもらった。

いま、作家としての視点が“未来”を見据えている――その現在地を見つめる。

 

 

楽曲制作の裏話、hoto-Dとの関係性、自作曲への挑戦

 

アセビカンナ:hoto-Dさんと一緒に楽曲を作っていらっしゃいますよね。
作詞は吉田さんが担当されていますが、実際に曲を制作するときって、どんなやりとりをしながら進めているんですか?具体的な手順というか。

 

吉田武寛:まず「こういう作品です」っていうのをお伝えして、「この作品には、こういう曲が欲しいです」とリクエストします。 『王ステ』も『女王ステ』も、毎回作れる曲数が限られているので、「このシーンで必ずこの曲」みたいな完全指定は難しいんですよ。

 

アセビカンナ:ある程度ざっくりと、「このあたりの場面で使いたい」という感じなんですね。

 

吉田武寛:そうです。シーンに当てはめながら、「もっとこうしたい」「この雰囲気で」と相談して作っていくことが多いです。
でも、まずはhoto-Dさんに「最高のメロディをください!」ってお願いしています(笑)。

 

アセビカンナ:最初はメロディありきで、それにインスピレーションを加えて仕上げていくんですね。

 

吉田武寛:そうですね。ただ、歌詞が先にできることもあります。
たとえば『女王虐殺』の1曲目は、歌詞が先でしたね。

 

アセビカンナ:M1『虐殺部隊』ですね

 

 

 

 

吉田武寛:はい。あと、『いつか死ぬのに(死ねないのに)なぜ生きるのか』(通称Ask)は、僕が鼻歌でサビのを録って送って、 「このメロディでサビお願いします!」っていうやり方でした。

 

アセビカンナ:へぇ〜、そんなこともあるんですね!

 

吉田武寛:ありますね。でもやっぱりhoto-Dさんのすごさは
『果てしない世界へ』生み出したっていうところに表れてますよね。
あれは本当に、シリーズ全体の核になるような名曲と思ってます。

 

アセビカンナ:まさに“不朽の名曲”というか。あの1曲にすべてが詰まってるような。

 

吉田武寛:ほんとにそう思います。
あの1曲があるから、シリーズが動き出せたというか……本当に象徴的な曲ですね。

 

アセビカンナ:その一方で、シーンのために曲が作られるというよりは、曲の雰囲気から逆にシーンが決まるパターンもあるんですか?

 

吉田武寛:ありますね。たとえば『WW』は、もともと全然違うシーン用に作られてたんです。でも、届いた曲を聴いてみたら「こっちのシーンに合うな」って思って、そこに差し替えました。

 

アセビカンナ:あの曲は、まさに“進軍”していくようなリズム感ですよね。

 

吉田武寛:そうですね。僕がイメージしていたメロディと、hoto-Dさんのメロディが全て一致するわけではないので、そのズレから逆に面白いアイデアが生まれることもあります。

 

アセビカンナ:キャラクターごとに、「この人が歌うならこういう曲」という発想で作られることもありますか?
たとえば、ヴラド・ヴェンツェルやジェリコが歌うなら…みたいな。

 

吉田武寛:あります、あります。
「この人が歌うナンバーだ」っていうのが最初にある場合もあります。
たとえば、“双子の悪魔”――あれは完全に「二葉兄弟が歌う曲を作るぞ!」っていう前提で進めていました。

 

アセビカンナ:ああ、もう最初から“あの二人”が歌う曲として構想されていたと。

 

吉田武寛:そうです。それははっきりしていましたね。

 

アセビカンナ:ここまでのお話でたくさんの創作エピソードを聞かせていただきましたが、
吉田さん的に、これから挑戦してみたいことってありますか?
『王ステ』『女王ステ』に限らず、なにかこう、「これをやってみたい」っていう野望みたいな。

 

吉田武寛:今、実は作曲をやってるんですよ。
どこかで、自分の曲を作品の中で使ってみたいなと思ってます。
それが今、一つ目の野望ですね。

 

アセビカンナ:作詞・作曲ともに、吉田さんになるわけですね!

 

吉田武寛:そうですね。もちろん、hoto-Dさんは変わらず“師匠”として尊敬していますし、これからもメインはhoto-Dさんです。けど、自分の音楽でも何か形にしてみたいという気持ちはずっとあって。
音楽を扱う作品を作っていく中では、それが一番の勉強にもなるな、と

 

アセビカンナ:シリーズのさらなる成長が楽しみですね。

 

吉田武寛:そうですね。それに、『王ステ』は、今のところ、10作品を目標、ということでやっています。
少しずつ終わりも見えてきたので、そこに向かってどう盛り上げていくかも考えています。『女王ステ』の方も、また一つ切り替えて進めていきたいと思っています。

 

 

構成技術、時間配分、観客との対話としての演劇

 

アセビカンナ:話は変わりますが、吉田さんご自身の“創作環境”についてもお聞きしたいのですが、台本はどんな場所で書かれているんですか?

 

吉田武寛:基本的には喫茶店ですね。〆切に追われている時は、1日に3〜4軒くらい、喫茶店をはしごしながら書いています(笑)。

 

アセビカンナ:すごいですね! 一気にガーッと書き上げるタイプなんですか? それとも少しずつ積み上げていくような?

 

吉田武寛:稽古がある時期は、朝2時間書いて、稽古に行って、夜また2〜3時間書く…というサイクルで進めています。

 

アセビカンナ:台本は最初から順番に書いていく感じですか? それとも、印象的なシーンから?

 

吉田武寛:まず、全体の流れをダイジェスト的にざっくりまとめます。それをもとに、本編を時間配分を意識しながら組み立てていく感じですね。たとえば『黄昏の王』だと、2時間のうち中間に“ミッドポイント”が来るように設計しています。

 

アセビカンナ:たしかに印象的なシーンが真ん中できますね。

 

吉田武寛:そうです。観客の集中が切れないように、前半で引き込んで、中盤で物語をひっくり返す。そして後半は一気に加速する構成を意識しています。

 

 

 

 

アセビカンナ:まるで「二本立て」を観ているように印象が変わる瞬間がありますよね。

 

吉田武寛:それは、毎作品で意識しています。

 

アセビカンナ:吉田さんの作品って、「観客を飽きさせないこと」や「感情を揺さぶること」に、とても意識的だと感じます。特に開幕の5分間は、観客の意識を一気につかみにくるような。最近、吉田さん自身も観劇に行って学んだりしていますか?

 

吉田武寛:最近、バレエにはまってて。バレエや歌舞伎などの古典芸能は、何百年も続く中で“魅せるための技術”が磨かれてきた。その工夫には必ず理由があるし、開演の瞬間から魅せにいく力がある。だから最近は、そういった古典も観に行くようにしています。とても刺激を受けますね。

 

アセビカンナ:吉田さんの作品は悲劇が多いですが、とにかく美しいですよね。現実を超える感情や、言葉にできない体験が届くというか。

 

吉田武寛:ありがとうございます。やはり“演劇だから見られる景色”を届けたいので、これからも切磋琢磨していきたいと思います。

 

アセビカンナ:長時間、本当にありがとうございました。ここまで“ご自身の創作”について深く語っていただけたのはとても貴重でした!

 

吉田武寛:こちらこそ、たくさん引き出してもらってありがとうございました。普段あまり自分のことをここまで話す機会がないので、ありがたかったです。

 

 

吉田武寛 創作スケッチまとめ

【序章】吉田武寛 創作スケッチ

【第1章】原点と試行錯誤

【第2章】困難と躍進

【第3章】創作の現在地と未来

 

王ステ - 公式サイト

女王ステ - 公式サイト

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