25.11.13音が紡ぐ女王ステと王ステの歴史

思いだす

アセビカンナ:確かに。テーマ曲だったり、ジェリコの存在感を後押しするような楽曲のオンパレードでしたよね。ありがとうございます。そして また女王ステに戻り、2022年の10月「女王虐殺」ですが、女王ステの中では一番現代に近い設定であり、作風としてはモノクロなイメージがありますが、「女王虐殺」の楽曲作りはいかがでしたか?

 

 

hoto-D:とにかく”虐殺”というタイトルのパンチが強かったので、 その瞬間に曲ができてたってくらいイメージがまとまっていました。メタルやハードコアといったジャンルの音楽がない時代ですが、ガンガンなロックテイストで作りました。

 

アセビカンナ:ギターガンガン鳴らしてという意味ではとても現代的ですよね。

 

hoto-D:一番作りやすいです、(笑)

 

アセビカンナ:hoto-Dさん的にも得意なジャンルだったんですね。「虐殺部隊」はガンガンそういったテイストだったと思うんですが、どういった感じで制作されたのでしょうか?

 

hoto-D:僕のイメージは行進してたりカチカチした動きをイメージして作ってました。曲として伝えてるわけではなかったのですが、完成した演出と振り付けがイメージ通りに一致しており、嬉しかった記憶があります。

 

アセビカンナ:そうだったんですね。以心伝心といいますか、演出の吉田さんと知らず知らずのうちにイメージがシンクロしていたということですね。

 

hoto-D:長くやってますからね。割とそういうことは多いですね

 

アセビカンナ:そういう意味では、相談をしなくても、作曲中に「吉田さんがきっとこういう場面で使うだろうな」というイメージがなんとなく浮かんでくるものなんですか?

 

hoto-D:それが意外とこちらの想定以上に別の場面で使ったりするので、一辺倒にはいかないんですよね。「もっと面白いことがあるんじゃないか」と常に考えているんだと思います。「これじゃ普通じゃん」というところには決して収まらないんですよ、吉田さんは。

 

アセビカンナ:常に2手3手先を描き、いい意味でお客さんを裏切るようなことを考えていらっしゃいますよね。

 

hoto-D:制作中に少し疑問に思うことがあっても、とりあえずやってみようと思うことが多いですね。結果的に劇場で実際に見ると、「なるほど、さすがだな」といつも吉田さんに思わされます。

 

アセビカンナ:吉田さんへの信頼があるからこその作り方なんですね。そして2023年3月の「女王幻想花劇」、ジャック編3部作の集大成となる作品が上演されました。女王ステの中でも特に華やかな作品で時代背景としては20世紀初頭の物語でしたよね。こちらはいかがでしたか?

 

hoto-D:マタ・ハリのことをすごく調べました。女性らしさを売りにしていた時代で、実際はどうだったのかあまり分からなかったので、「そういう人たちはどんなことを考えていたんだろう」と思って、キャバクラに行って話を聞いたりしました。踊り子のイメージみたいなのをずっと考えてました。

 

アセビカンナ:より女性らしさを追求されたんですね。さて、「女王幻想花劇」は第一次世界大戦の開戦という戦争の話でもあったんですが、名曲「WW」が出来上がりましたが、「WW」はどのような形で作られたんですか?

 

hoto-D:WWは戦争をイメージしていて「女王虐殺」に通じるような規律のあるカチッとした雰囲気で作りました。ただ、メロディーを作っているときは歌ではなく楽器の音で打ち込んでいて、「これ、本当にメロディーとして成立するのかな?」と思うくらい歌のメロディーっぽくなかったんです。そしたら吉田さんがそこに歌詞を乗せてきて、「WWって!(笑)」ってなって。なんじゃこりゃと思ったんですが、シーンを見たらやっぱりハマっていて。

 

アセビカンナ:本編の中でも今まで華やかだったところにドンっと戦争の曲として進軍していくような雰囲気はとても印象的でしたね。

 

hoto-D:オリジナルは4曲ずつ作っているのですが、その中でどれだけ幅を持たせられるかというのは、吉田さんと毎回相談しながら進めていますね。

 

アセビカンナ:なるほど。明るい曲やったらダークな曲を1曲織り混ぜたりとか、華やかな曲と激しい曲といった感じなんですね。さあそして今度は「星よ女王に堕つ」ということで、新たな主人公アトレイユが出てきまして、これまた星がテーマの作品でしたが、こちらいかがでしたか?

 

hoto-D:結構星を意識できた気がしますね。多少いつもよりアイドル感あったんじゃないかなと思います。キャピキャピしてるという意味合いではなく、キャッチーだったんじゃないかなと個人的には思ってますね。

 

アセビカンナ:確かにメロディーラインが頭に残るような曲が多かったイメージがありますね。

 

 

hoto-D:そうですね、多分その頃からメロディーを重視した曲が多くなったイメージです。わかりやすく、歌うことを念頭に置くという意識を強めて制作しておりました。

 

アセビカンナ:なるほど。キャストの方たちが最終的に歌っているというところをイメージして作られていると。そういったアイドル味が増したみたいなところで言うと、 当初の「赤の女王」の時のコンセプトにある意味では回帰したみたいな部分もあったんでしょうか?

 

hoto-D:確かに間を挟んでいる作品よりはそうかもしれないですね。「女王演義」「女王虐殺」「女王幻想花劇」あたりはかけ離れて戻ってきた感はあるかもしれないですね。

 

アセビカンナ:その後、待望の「楽園の女王」を再演するということで、新曲も書かれたと思いますがいかがでしたか?

 

hoto-D:実は「楽園の女王」のテーマ曲がもしかしたら自分の中で一番好きかもしれないんですよね。邪悪さがあって、自分の中では女王ステのイメージのルーツになっていると思います。 新曲で書いたのが悪魔の曲とかだったんですけど、悪魔については西葉さん(西葉瑞希:カーミラ役)が好きな音楽を知ってたので、そのテイストを活かそうと思って制作しました。

 

アセビカンナ:1つは西葉さんが歌うことを最初から念頭において制作されたんですね。もう1曲はキュアーズ株式会社の曲でしたが、そちらはどうでしたか?

 

hoto-D:毎度あるコミカルな曲として考えていたんです。その時期に自分の中で流行っていたのが、海外アーティストのDua Lipaで、昔の曲を今風にした“Future Retro”というジャンルでした。古臭い80年代っぽいビートなのに、今の洗練された音になっている感じで、そのテイストを取り入れたいと思って作ったら、見事にハマりましたね。

 

アセビカンナ:悪魔の邪悪な曲とキュアーズの楽しい曲と言いますか。これもやはり作品の中で幅を持たせるという意識はあったんですかね?

 

hoto-D:そうですね。楽しさと邪悪というよりはシリアスとユーモラスみたいな感覚で考えていましたね。

 

アセビカンナ:さあそして「月よ女王に嗤え」。作中の 時系列で言いますと「女王輪舞」のまさしく後日談と言いますか、直後の話ということで 、時代背景的にもかなり近しいものが あったと思うんですが ただ上演時期的には3年ほど期間が空いているというところでhoto-Dさんの中で「女王輪舞」と比較して楽曲作りのスタンス等々どのような変化がありましたか?

 

hoto-D:やはりその前々作「星よ女王に堕つ」の流れがあって、「月よ女王に嗤え」はより歌もの、アイドルテイストが強かったと思います。一方で「女王輪舞」は、それ以上に世界観や背景を意識した作品でしたね。

 

アセビカンナ:あの切り裂きジャックの事件だったり。

 

hoto-D:そうですね。時代背景に特に意識がありましたね。それまで叙景で作ったものが叙情になっていったんですよね。

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