25.9.26「女王ステ」アンの変遷を追って──

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「女王ステ」アンの変遷を追って──

星守紗凪ロングインタビュー

聞き手:アセビカンナ/語り手:星守紗凪

 

約6年にわたり「女王ステ」シリーズで不死者”アン”を演じ続けてきた星守紗凪さん。

役と共に歩み、変化を重ねてきた軌跡は、シリーズの歴史とともに刻まれています。

本インタビューでは、「楽園の女王」「女王輪舞」「月よ女王に嗤え」「女王虐殺」、そして最新作「女王旋律」へと至るアンの変化を余すことなく語っていただきました。時代を行き来しながらキャラクターを形づくる難しさ、舞台上での戦いや歌への想い、そして星守さん自身が見つめる“人間らしさ”とは。アンの物語を追いかけてきた方も、これから出会う方も楽しめるロングインタビューです。

 

アセビカンナ:はい、インタビューさせていただきます。アセビカンナと申します。

 

星守:星守です。お願いします。

 

アセビカンナはい、というわけでですね、アンの変遷を辿っていこうみたいなところでインタビューさせていただきたいんですが、まずは一番最初が2019年ですね。

 

星守はい。

 

アセビカンナ『楽園の女王』の初演ということで。女王ステの2作目からアンが登場したわけですけれども、当時アンという役を振られて、どのようなスタンスといいますか、お気持ちで演じられていましたか?

 

星守そうですね。今となってはすごくメインのキャラクターのように扱っていただいていて、ダークヒーロー的に悪者なりにストーリーを持った役柄に成長したと思うんですけど。当時、最初に演じたときは本当にただの極悪キャラで、まさかここまで愛されて長く登場できるキャラクターになるとは思っていませんでした。最初はとにかく「人間として生きなきゃいけない」という立場の他キャラクター──例えばエリザベートやアメリアは、『赤の女王』から主人公的に描かれていて、悪役ではあるけれど背景がしっかりある存在でした。でもアンはそうではなくて、背景など関係なく“人を殺しまくる悪いやつ”として登場していたんです。

ただ、私は役作りで背景を考えるのが好きなので、「人を殺してしまうにもきっと理由がある」と思いながら演じていました。でも続きに自分が出てくるなんて思っていなかったので、とにかく“悪くて悲惨で最悪なキャラ”として、みんなをぐちゃぐちゃにかき回す快楽殺人者のように暴れ回って、最後は成敗されて終わる──そのくらいの気持ちで演じていました。初演では、とにかく“確立された一番悪いキャラ”として印象づけよう、という思いでしたね。

 

アセビカンナ『女王虐殺』のいつかのカーテンコールでも、そういうふうにおっしゃってましたもんね。

 

星守言ってましたね! 毎回思うんです。アンをこんなに連続して演じさせていただけるなんて、本当に思っていなかったので。今となっては主演として物語を描いていただけるようになりましたけど、あの時は全く想像していませんでした。だから今もずっとその気持ちでいます。

 

アセビカンナちなみに当時演じられてた時に、バックボーンとしてはどのような作り込みをされてたんでしょうか? 特に『楽園の女王』での従者グレンダとの関係性とか。

 

星守そうですね。続きものに出していただけるようになって、『女王虐殺』でアンの過去が描かれました。実は初演のときから「イギリスの女王様だった子が、殺人を犯して捕まったけれど逃げ出して、その後、船に乗っているかもしれない」という経緯は語られていたんです。
ただ、その理由までは初演では背景としてしっかり語られていなかったんですね。
理由がなければ人を殺したりしないだろう、という意味で、私は想像の上で「国のため」「家族のため」という背景を作っていました。女王ではあるけれど周囲に裏切られて、力を手に入れるために悪魔と契約し、100人殺しを決意した──そういう設定です。だから「ただ楽しくて殺している」のではなく、「自分の力を手に入れるためにその道を選ぶしかなかった」というイメージで演じていました。
あと、グレンダに関してですが……そうですね、もう2回演じているので少し記憶が混ざっているかもしれません。ただ、一応最初から“幼馴染のような存在”としてイメージしていました。ああいう家系って、王家と従者の家系が代々続いていると思うんです。だからグレンダはもう癖のように、アン様に付き従うことが当たり前になっている。裏切ることは絶対にない。子どもの頃から「女王様と従者」として育ってきた2人なので、すごく近しいけれど、親友のようでいて上下関係はしっかりある──そんな関係だと思って、初演から演じていました。その気持ちは再演でも同じでした。

 

 

アセビカンナなるほど。それでは再演の方を振り返ってみようと思います。『女王輪舞』があって、『女王虐殺』があって、そこからまた遡って『楽園の女王』を再度演じ直す、という流れだったと思うんですが──演じ直すにあたって、心境の変化はありましたか?

 

星守そうですね。当時はもちろん本当に極悪人として演じてたのですが、再演となると『女王虐殺』でちゃんと過去が語られたこともあって、可哀想な面、人間味が増したというか……。確かに自分の力を手に入れるために悪魔と契約するって設定はぶれてないんですけど。初演はもっと、「悪魔と契約したい!」みたいな方で演じており、再演は「悪魔と契約せざるを得ない」という方に切り替えて、演じ直したような気がします。心境的には。

 

 

アセビカンナ確かに黒死病が発覚してから、より一層生き残るために人を殺さなければと……。

 

星守:そうなんですよ。初演では、最初から悪魔と契約したくて船に乗っている。だから、脱獄した時点で100人斬り始めた、みたいな感じにしていたと思います。でも、再演では、黒死病が発覚してから「やらなきゃ」と決めた、というふうに切り替えて演じました。大元の設定を大きく変えたわけではないですが「殺人がしたかった子」というよりは「せざるを得なくなった子」の方に気持ちを少しシフトした感じです。

 

アセビカンナなるほど。そういう中で、演者さんは違えど、エリザベートたちと対峙すると思うんですけど、初演と再演での各キャラクターとの対峙の仕方は、どういうふうに変わりましたか?

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