──2016年・2018年公演を振り返る
小宮山:2016年、2018年の音楽劇について、振り返っていきたいと思います。吉田さん、当時の脚本の狙いをおしえてください。
吉田:2016年に初演した時は、MVを舞台のラストに流すという構成で、本編がそこにつながるように脚本を組み立てました。舞台版のラストがMVのはじまりになるように、ストーリーをつなげたんです。
小宮山さんとも、この作品をきっかけに出会いましたよね。
小宮山:そうですよね。企画を実現したいと脚本家・演出家を探していた時に、吉田さんと出会いました。すばらしい脚本が上がってきた時の感覚も覚えています。
佐藤さんは、当時を振り返っていかがですか?
佐藤:2018年の音楽劇のときは、舞台後方の大画面に映像が流れ、生演奏とあわせてとても贅沢な空間になっていたのを覚えています。
生バンドの皆さんもとても気さくで、ダンスシーンの際にストリングスの方と目が合ってコミュニケーションをとる場面もありました。舞台上で音楽家とセッションのような形で演じられるのは、他の公演ではなかなか味わえない体験です。
HIDETAKE:演奏家たちが舞台上に上がってスポットが当たっているという構成も、通常の舞台やミュージカルとは異なる点ですね。オーケストラが舞台下にいるのが一般的ですが、「Express」では舞台の一部として彼らが存在している。
さらに言えば、演奏しているメンバー全員がこの舞台自体にすごく興味を持っていて、演奏しながらもどこか“観客”として楽しんでいるんですよね。そんな感覚がありました。
小宮山:生演奏の人数も今回は12人と、とてもボリュームのある構成ですよね。朗読劇でこれだけの演奏家が並ぶのは本当に贅沢だと思います。セクションが大所帯でしたが、演出的に大変だったことはありますか?
吉田:たくさんいて大変ということはなかったです。ただ、HIDETAKEさんがニューヨークに住んでいて、来日が劇場入り前日のようなタイミングだったんですよ。それが痺れました。
HIDETAKE:確か飛行機がキャンセルになって、リハーサルを一回飛ばしちゃったんですよね。あのときは本当にギリギリでした(笑)。
今回も、だいぶ“痺れる”状況になってますよ。この公演って、毎回そうなんですよね。毎回、痺れてる(笑)。
というのも、みんな本当に頑張って大きなものにしようとするから、やっぱり自分のキャパシティのギリギリのところでやってるんです。だから毎回、ハラハラするし、ドキドキもするし……。でも、それがもうアディクティブ(中毒的)なんですよね。
小宮山:ちなみに当時の観客の反応は覚えていますか?
HIDETAKE:2018年だから…だいぶ前ですね(笑)。
佐藤:あの時、ダンスシーンがあったり、観客席からの登場シーンがあったりして、その時に共演した役者さんと最近また共演したんです。懐かしい話がたくさん出て、すごく良い時間だったなと振り返っています。
楽器隊のリハーサル(映像)を見たときに「こんな流れなんだ!」と、役者同士で驚きながら話したのを覚えています。テンション上がりましたね。
小宮山:そういえば、HIDETAKEさんは最初、「楽器隊が舞台に出るのに抵抗がある」と話していませんでしたか?
HIDETAKE:そうですね。今でも少し思うところはありますが、当時は特に「音楽家は裏方であるべき」という意識がありました。
舞台に上がると、お客さんが「この人たちは誰?」と混乱しないかなと。ストーリーとは関係ないので。
でも「Express」はモチーフが楽曲なので、その点は違和感はなくなりました。
小宮山:観る側としては、あれだけの大人数の楽器隊が本当に目の前で演奏しているという体験は、ものすごく贅沢に感じられるんですよね。