25.6.7「Express」2025年再構築

語りあう

 

「Express」誕生から舞台化まで

5月3日(土)に上演されるReading Concert「Express」2025は、HIDETAKE TAKAYAMAが手がけた楽曲「Express」をモチーフに生まれた作品だ。

 

そのエネルギッシュなサウンドに着想を得た映像作家・森江康太によってMVが制作され、やがて『銀河鉄道の夜』の“その後の物語”として新たな命を帯びていく。

 

楽曲が映像となり、そして朗読劇という舞台へ──表現のかたちを変えながら広がっていった創作の軌跡を、関係者たちが振り返る。

 

■メンバー
HIDETAKE TAKAYAMA(音楽)、吉田武寛、(脚本・演出) 、佐藤弘樹(俳優) 、小宮山薫(舞台プロデューサー)

 

「Express」誕生秘話

── HIDETAKE TAKAYAMAによる楽曲の制作背景と、MV誕生の経緯

 

小宮山:今回の公演は「Express」という楽曲から派生して生まれた作品となっており、これを機に初めてこの曲を知る方もいらっしゃると思います。

そこで、この曲のメイキングストーリーや背景、タイトルの由来などを改めてお話しいただけたらと思っております。

 

HIDETAKE:「Express」という曲は、2012年の7月にリリースした僕のセカンドアルバムに収録されている楽曲です。そもそも作曲段階では、童話『銀河鉄道の夜』(著:宮沢賢治)を意識していたわけではありませんでした。

 

最初に僕が描いていたのは、何かがものすごいエネルギーで突き抜けていくようなイメージ…彗星のように、とにかく速く、力強く進む存在を音で表現した曲でした。

 

その後、森江くん ──今回の舞台とも関わっているTRANSISTOR STUDIOの森江康太さん── に「この曲でミュージックビデオを作ってみたい」と相談したところ、彼から「これは『銀河鉄道の夜』をイメージした」と返ってきたんです。そこから自然と『銀河鉄道の夜』の“その後の物語”を想起させる映像が形になっていきました。

 

「Express」というタイトルについても最初からそう決めていたわけではありませんが、急行列車のように“速く走り抜ける”イメージがありましたし、あとになって“表現する”という意味もあると気づいたんです、 “Express Yourself” のように。

 

作品の中でジョバンニが「自分をどう表現していいかわからずに苦しんでいる姿」と、この「Express」という言葉には、どこか通じるものがあるなと感じています。

 

つまり、この楽曲は「Express」というテーマを最初に掲げて作ったというより、曲を完成させた後にその意味を探して「Express」という名前に辿り着いた、そんな作品なんです。

 

小宮山:では、最初はどういったインスピレーションで生まれた曲だったのでしょうか?

 

HIDETAKE:曲自体は、自然のものがすごいエネルギーで動いている様子を描いています。

 

それがあまりポジティブっていうよりは、なにか嬉しいのか悲しいのか、心が震えているのかわからないけれど、すごく速いスピードで動いてる…そのエネルギーを音楽に落とし込んだイメージですね。

 

小宮山:森江さんとのやりとりの中で『銀河鉄道の夜』のイメージがはまり、あのようなPVが生まれたんですね。

 

HIDETAKE:そうですね。『銀河鉄道の夜』に関しては小学校の頃に読んだ記憶がある程度だったのですが、森江くんに言われてもう一度読み直してみたら、今の自分の感性にすごく合っていると感じました。わかりにくい、難しい本ではありますが。

 

小宮山:今回僕も原作を改めて読んだのですが、「こんなに難しかったっけ?」と驚きました。子どもの頃に絵本で見ていた記憶があったので。

 

HIDETAKE:大人が読むと余計に考えてしまいますよね。子どもの方が素直に読めるのかもしれません。

楽曲が導いた物語

──楽曲からMV、そして舞台へ

 

小宮山:今回の「Express」は、『銀河鉄道の夜』の“その後”のストーリーを描かれていますが、その構想はどういった流れで固まっていったのでしょうか?

 

HIDETAKE:特別「その後を描こう」と明確に話したわけではないのですが、森江くんと打ち合わせをしている中で「銀河鉄道の夜の“その後”」というキーワードが出てきて、それがすごくしっくりきたんです。

 

(森江くんの)プレゼンテーションもとても感動的で、涙が出るほどで。すごくパワフルなコピーですよね、「銀河鉄道の夜のアフターストーリー」というのは。

そのクリエイティビティはさすがだなと思いました。

 

小宮山:MVが上がってきたときの感情は覚えていますか?

 

HIDETAKE:すごく感動しました。企画段階の時点で「これはいい作品になる」と確信があったので、そこから1年かけて作られたMVが完成した時は、もうその期待を超えてくるものだったというか。待ち望んでいた分、感極まりました。

 

小宮山:それが2012年頃でしたよね。

僕も当時あの楽曲やMVにとても感動して、「これは朗読劇として舞台化したい!」という思いが強くなりました。

あの頃、吉田さんもすでに楽曲「Express」を聴かれていたんですよね。

 

吉田:はい。「Express」の企画をいただく前から、IN YA MELLOW TONEの曲も含めてHIDETAKEさんの音楽は聴いました。

だからお話が来たときには「まさか、あの曲か!」と。すごく嬉しかったです。

 

小宮山:僕も初めてMVを観たときに、これは舞台にしたいと直感的に感じました。当時は、寿福さん(GOON TRAX主宰)にもすぐ相談して、「どうぞー」とすぐに返事が返ってきて、「軽いなぁ」と思ったことを覚えています(笑)。

 

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