25.4.22初演・再演を越えて今へ

待ちのぞむ

2016年に初演、2018年に再演された音楽劇「Express」。

 

MVを起点に生まれたこの舞台作品は、生演奏と映像が融合する独自のスタイルで、観客に鮮烈な印象を残した。

 

そして2025年、朗読劇として新たな表現へと進化する本作。

過去2公演をともに作り上げたメンバーが当時を振り返り、創作の裏側、そして自身の変化を語り合う。

 

表現の“深化”がもたらす、次なるステージへの展望とは──。

 

■メンバー
HIDETAKE TAKAYAMA(音楽)、吉田武寛、(脚本・演出) 、佐藤弘樹(俳優) 、小宮山薫(舞台プロデューサー)

初演・再演の記憶をたどる

──2016年・2018年公演を振り返る

 

小宮山:2016年、2018年の音楽劇について、振り返っていきたいと思います。吉田さん、当時の脚本の狙いをおしえてください。

 

吉田:2016年に初演した時は、MVを舞台のラストに流すという構成で、本編がそこにつながるように脚本を組み立てました。舞台版のラストがMVのはじまりになるように、ストーリーをつなげたんです。

 

小宮山さんとも、この作品をきっかけに出会いましたよね。

 

小宮山:そうですよね。企画を実現したいと脚本家・演出家を探していた時に、吉田さんと出会いました。すばらしい脚本が上がってきた時の感覚も覚えています。

 

佐藤さんは、当時を振り返っていかがですか?

 

佐藤:2018年の音楽劇のときは、舞台後方の大画面に映像が流れ、生演奏とあわせてとても贅沢な空間になっていたのを覚えています。

 

生バンドの皆さんもとても気さくで、ダンスシーンの際にストリングスの方と目が合ってコミュニケーションをとる場面もありました。舞台上で音楽家とセッションのような形で演じられるのは、他の公演ではなかなか味わえない体験です。

 

HIDETAKE:演奏家たちが舞台上に上がってスポットが当たっているという構成も、通常の舞台やミュージカルとは異なる点ですね。オーケストラが舞台下にいるのが一般的ですが、「Express」では舞台の一部として彼らが存在している。

 

さらに言えば、演奏しているメンバー全員がこの舞台自体にすごく興味を持っていて、演奏しながらもどこか“観客”として楽しんでいるんですよね。そんな感覚がありました。

 

小宮山:生演奏の人数も今回は12人と、とてもボリュームのある構成ですよね。朗読劇でこれだけの演奏家が並ぶのは本当に贅沢だと思います。セクションが大所帯でしたが、演出的に大変だったことはありますか?

 

吉田:たくさんいて大変ということはなかったです。ただ、HIDETAKEさんがニューヨークに住んでいて、来日が劇場入り前日のようなタイミングだったんですよ。それが痺れました。

 

HIDETAKE:確か飛行機がキャンセルになって、リハーサルを一回飛ばしちゃったんですよね。あのときは本当にギリギリでした(笑)。

 

今回も、だいぶ“痺れる”状況になってますよ。この公演って、毎回そうなんですよね。毎回、痺れてる(笑)。

 

というのも、みんな本当に頑張って大きなものにしようとするから、やっぱり自分のキャパシティのギリギリのところでやってるんです。だから毎回、ハラハラするし、ドキドキもするし……。でも、それがもうアディクティブ(中毒的)なんですよね。

 

小宮山:ちなみに当時の観客の反応は覚えていますか?

 

HIDETAKE:2018年だから…だいぶ前ですね(笑)。

 

佐藤:あの時、ダンスシーンがあったり、観客席からの登場シーンがあったりして、その時に共演した役者さんと最近また共演したんです。懐かしい話がたくさん出て、すごく良い時間だったなと振り返っています。

 

楽器隊のリハーサル(映像)を見たときに「こんな流れなんだ!」と、役者同士で驚きながら話したのを覚えています。テンション上がりましたね。

 

小宮山:そういえば、HIDETAKEさんは最初、「楽器隊が舞台に出るのに抵抗がある」と話していませんでしたか?

 

HIDETAKE:そうですね。今でも少し思うところはありますが、当時は特に「音楽家は裏方であるべき」という意識がありました。

 

舞台に上がると、お客さんが「この人たちは誰?」と混乱しないかなと。ストーリーとは関係ないので。

でも「Express」はモチーフが楽曲なので、その点は違和感はなくなりました。

 

小宮山:観る側としては、あれだけの大人数の楽器隊が本当に目の前で演奏しているという体験は、ものすごく贅沢に感じられるんですよね。

7年越しに感じる“表現”の進化と深化

── それぞれが語る、時を経た自身の変化と作品への向き合い方

 

小宮山:さて、あれから7年が経ちました。表現者として走り抜けてきた、この7年間で心境の変化などはありましたか?

 

吉田:会場であるTHEATER1010は、当時の僕にとって人生で初めての大きな劇場だったので、緊張しました。

 

でもこの7年間で大きな会場での演出も増えたので、今ならちゃんとやりたいことを表現できるという自負があります。

 

HIDETAKE:僕もそうですね。7年経つと自分の環境も、創りたいものも変わっていて。7年経って同じ作品をやれることは、7年間修行した成果を実感できる機会なのかなって思います。楽しみですよね。

 

以前は多くを詰め込もうとしていましたが、今は1曲1曲を丁寧に、シーンごとにじっくり作り込む方向に変わってきました。自分の中でも表現の質が変化していると感じます。

 

小宮山:佐藤さんはいかがですか?

 

佐藤:クリエイターの皆さんとは少し違った立場にはなりますが、前回が音楽劇、そして今回は朗読劇ということで、作品の形式そのものが変化している点に、大きな挑戦を感じています。

 

僕自身、朗読劇という形式がとても好きで。演者も観客も、自然と“音”に対して深く集中する空間になるんですよね。そのぶん、より繊細な表現にまで踏み込むことができる。

 

もちろん、お客さまは作品を受け取ってくださる立場なので、「もっとこうしてほしい」と思うことはないかもしれませんが、演者としてはどこまでも追求できるという感覚があります。

 

そして今回ご一緒する方々は、声優として活躍されている方ばかりで、その道の確かな技術を持った方々ばかりです。

 

加えてバンドの生演奏ということで、今回ならではの繊細な“音”が次々に生まれてくるのではないかと、僕自身とても楽しみにしています。前回との違いも大切にしながら、新しい挑戦としてしっかり向き合っていきたいです。

 

小宮山:たしかに作品形式が変わるのは今回のすごく大きな見どころですよね。脚本・演出も大きくリニューアルされると思うのですが、そのあたりは吉田さん、いかがですか?

 

吉田:今回の台本については、一度原作をすべて読み直したうえで、全面的に書き直しました。前回の公演では“現代のシーン”が挿入されていましたが、今回はそれをあえてなくして、本来の世界観をしっかりと描こうと考えたんです。

 

そういう意味でも、より『銀河鉄道の夜』、そして『Express』という作品にふさわしい脚本に仕上がったと思っています。

 

この新たな脚本を、キャストの皆さんの演技と、生演奏の音楽で立ち上げてもらいながら、一体感のある、豊かな空間をつくりあげていけたらと思っています。

 

 

Next→宮沢賢治と交わす静かな対話

Reading Concert「Express」2025 公演概要

■日程:2025年5月3日(土)昼公演 14:00開演 / 夜公演 19:00開演
■会場:シアター1010(東京都足立区千住3-92 千住ミルディスⅠ番館 11階)
■出演:村瀬歩、小林裕介、富田麻帆、榊原優希、佐藤弘樹 ほか
■音楽:HIDETAKE TAKAYAMA
■脚本・演出:吉田武寛
■公式HP:https://www.reading-concert-express2025.com/
■企画・制作:ILLUMINUS

 

〈チケット一般発売中!〉

チケットぴあ
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2507743

カンフェティ
https://confetti-web.com/events/7203

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