25.4.24言葉と音の“セッション”をめざして

待ちのぞむ

2025年5月に上演される朗読劇『Express』は、宮沢賢治『銀河鉄道の夜』の“その後”を描く創作作品。

原作と向き合う中で見えてきた普遍的な問いと、朗読劇ならではの表現の奥深さについて、HIDETAKE TAKAYAMA・佐藤弘樹・吉田武寛・小宮山薫の4人が語り合う。

音楽、演劇、言葉──それぞれの視点から読み解く創作の現在地と、宮沢賢治との“静かな対話”の記録。

■メンバー
HIDETAKE TAKAYAMA(音楽)、吉田武寛、(脚本・演出) 、佐藤弘樹(俳優) 、小宮山薫(舞台プロデューサー)

それぞれの視点で紐解く“朗読劇の魅力”

──セッションで創り上げる、声と音の舞台

 

小宮山:佐藤さんは、朗読劇と通常のお芝居で、意識の違いや心構えに変化はありますか?

 

佐藤:“音”はとても意識しますね。今の現場でもそうですが、アイコンタクトに近いものがあって、役者も“音の引き継ぎ”をしている感覚があります。

たとえば芸人さんがツッコミの間を語るときに「その“音”じゃない」って言ったりするじゃないですか。まさにそれに近いです。

 

HIDETAKE:なるほどね、それ、すごくおもしろいですね。

 

佐藤:あとは、“間弱(かんじゃく)” ──たとえば音楽で言うところのテンポ感や、緩急の付け方みたいなものって、芝居の中にも確実に存在すると思っていて。相手がどんな音を出してくるか、それにどう反応してセッションしていくかっていうのは、演劇と音楽、どちらにも共通する部分があるんですよね。

 

そうした“音と言葉の掛け合い”が融合する場に立ち会えるのは、僕自身とても楽しみなんです。

 

それに、生演奏でしか生まれない“瞬間の空気”ってあるじゃないですか。たとえば音響さんが出す決まった効果音と違って、生バンドの場合、ストリングスが「ふわっ」と入ったり、リズムセクションが「シャシャッ」と走ったり。そういう“今この瞬間”にしか生まれない音がある。

 

そうした即興性や生々しさがあるだけで、作品としてのおもしろさはまったく違ってくると思うんです。演劇と朗読劇、どちらであっても、それが合わさったときにどんなものが立ち上がるのか、すごく期待しています。

 

HIDETAKE:朗読劇って、演じる上では演劇とはまったく違うものなのですか? それとも近い感覚なんでしょうか?

 

佐藤:近いと捉えることもできますし、実際に似たアプローチで演じることも可能だと思います。ただ、それをやりすぎてしまうと、朗読劇が“演劇の簡易版”みたいに見えてしまって、結果的にチープに映ってしまう危険もあるんですよね。

 

だったら最初から演劇でやればいいじゃん、って話にもなってしまう。

 

だからこそ、朗読劇で何を“武器”にするのか。声だけでどう勝負するのか、というのがすごく大事になると思います。よりよいテンポ、より心地よい“音”、あるいは聴きやすさ──そういった要素がないと、朗読劇である意味が薄れてしまうこともあると感じています。

 

HIDETAKE:なるほど。僕も台本を読んでいて、今回は“舞台ではない”からこそ、いわゆるト書きの部分──状況描写などを声優さんたちが読むわけですよね。それを観客がどう受け取るのか、すごく興味があって。

 

その世界観をどうやって想像するんだろう、って。

 

まさに無限ですよね、観る人それぞれがまったく違う景色を思い浮かべているはずで。そういう意味では、演劇よりも観客の想像力に委ねる部分が大きいと感じます。

 

佐藤:本当にそうだと思います。たとえば「夜空に星が浮かんでいて」という一文があったとき、その言い方ひとつでも全然意味合いが変わってきます。

 

「夜空に星が浮かんでいて」と普通に言うのか、「夜空に……星が浮かんでいて…」と余白を持って言うのか。その違いだけでも、その人物がその場に“実際にいる”のか、“本を読んでいる”のかという距離感がまるで変わってくるんです。

 

さらにそのセリフを語っている人物が、それを“悲しい”と感じているのか、“嬉しい”と感じているのかでも、声のトーンはまったく違うし、まったく別の情景になりますよね。

 

そうやって、言葉の音だけで全体の印象が大きく変わるのが朗読劇のおもしろさだし、役者としてはそういった繊細な表現を追求できることに、やりがいを感じています。より良いかたちで届けられたら、本当にうれしいですね。

 

小宮山:いい話してますね(笑)。

 

佐藤:こういう話をするための座談会なんじゃないですかね(笑)。

 

小宮山:ですね。演劇と朗読劇の違いって、情報の“密度”にもあると思うんです。朗読って視覚的な情報が少ない分、観客はより“想像力”を使わなきゃいけない。つまり、頭の中でシーンを構築する必要があるから、脳みその回転数はきっと上がっているはずなんです。

 

情報が与えられすぎていないからこそ、逆に没入できる。それが朗読劇の醍醐味なんじゃないかなって、いま改めて感じました。

 

HIDETAKE:いい話してますね(笑)。

 

小宮山:こういう話をするための座談会なんじゃないですかね(笑)。

2025年『Express』へ

──それぞれの想いと観客へのメッセージ

 

小宮山:2025年の『Reading Concert「Express」』は、これまでとはまた違った、新たな「Express」の形をお届けできる公演になると思います。

 

そんな本作への期待を込めて、最後に皆さんから一言ずつ、意気込みや届けたい想いを伺っていきたいと思います。ではまず、佐藤さんから。

 

佐藤:ありがとうございます。もうすでに話の中で、意気込みに近いことはだいぶお話ししてしまったんですけれど…。

 

やはり「朗読劇」という形式でやる理由を役者としてどう捉えるかというのは、常に意識しています。今回は、生バンドの皆さんとともに、さらにはダンサーの方々もいて、初演以上に多方面にわたるセッションが生まれる公演になるはずです。

 

そんな中で、自分がどう貢献できるか、どんな化学反応が起こるのか──それをすごく楽しみにしています。

 

“楽しい”という言葉では収まりきらない、なにか特別な公演にしたいと思っています。

 

小宮山:ありがとうございます。では、吉田さんお願いします。

 

吉田:僕もテクニカル面では色々と準備を進めていますが、やっぱり当日になってみないとわからないことが多いんですよね。

 

だからこそ、当日はまさにお祭りのような、スペシャルな1日になると思っています。その瞬間を、思いきり楽しみたいと思います。

 

小宮山:ありがとうございます。それでは、HIDETAKEさんお願いします。

 

HIDETAKE:そうですね、僕も「お祭り感」はすごく大事にしたいと思っています。リハーサルでの積み上げと、当日の予測不能なエネルギー、その両方があるからこそ、“生もの”としての舞台のおもしろさがある。

 

そして今回、同じ公演を何度も重ねてきたメンバーと、またこうして一緒に作品をつくれるというのは本当に嬉しいことです。この7年間、みんながどんなふうに生きてきたのか──そういう時間の積み重ねを持ち寄って、一緒に仕事ができることが楽しみです。

 

2012年に『銀河鉄道の夜』のアフターストーリーとして「Express」のMVを発表しましたが、今回の公演は、まさに“そのまた先”を描くようなもの。

 

長年作品を観てくださっている方にとっても、「これはあの続きなのかもしれない」と感じていただけるような、そんな新しい音と物語を、今の自分の感覚で届けられたらと思っています。

 

小宮山:ありがとうございます。いよいよ本番まであと2週間となりましたが、ここからさらに準備を重ね、最高の舞台をお届けできるよう、しっかり仕上げてまいります。

 

 

Reading Concert「Express」2025 公演概要

■日程:2025年5月3日(土)昼公演 14:00開演 / 夜公演 19:00開演
■会場:シアター1010(東京都足立区千住3-92 千住ミルディスⅠ番館 11階)
■出演:村瀬歩、小林裕介、富田麻帆、榊原優希、佐藤弘樹 ほか
■音楽:HIDETAKE TAKAYAMA
■脚本・演出:吉田武寛
■公式HP:https://www.reading-concert-express2025.com/
■企画・制作:ILLUMINUS

 

〈チケット一般発売中!〉

チケットぴあ
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2507743

カンフェティ
https://confetti-web.com/events/7203

 

 

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