時を超えて集まった悲劇の王たちを上質な空間で鑑賞――『王ステ THE LIVE 2026 -月夜の仮面舞踏会-』プレミアム応援上映会 イベントレポート

血塗られた歴史的事象をモチーフに描かれる暗闇の物語、『王ステ』シリーズ。その世界観を彩る名曲たちを存分に堪能できるライブステージの第2弾『王ステ THE LIVE 2026 -月夜の仮面舞踏会-』が今年3月、IMAホールにて行われ、さまざまな悲劇を経験した男たちが、時間と空間を超えて一堂に会した。熱狂の中で幕を下ろした本ライブを、大きなスクリーンと極上の音響環境で鑑賞することができるプレミアム上映会がILLUMINUS CREW限定イベントとして5月30日(土)に開催された。本記事ではその第2部の様子をレポートする。
イベントが行われたのは、109シネマズプレミアム新宿。東急歌舞伎町タワー内にある、最新鋭の上映設備を備えた映画館である。開演前には「とき」「おと」を楽しむ“TIMELESS MODERN”をテーマにデザインされた上質なラウンジで、ゆっくりとした時間を過ごすことができるのも魅力だ。今回も開場中のラウンジでは、推しの魅力を語り合ったり、アクリルスタンドを手にラウンジ内のアート作品や飲食物とともに記念写真を撮影したりするクルーたちが溢れていた。

今回は声出し歓迎の“応援上映”。ペンライトはもちろん、うちわやボードを用意しているクルーたちも見かけた。ところが、上映がスタートし、オープニングが流れると、タイトルにもある仮面を手に、妖艶な表情を浮かべるキャストたちが映し出されるも……推しの名前を呼んだり、「キャー!」という歓声が上がったりすることはなく、非常に厳かな雰囲気でペンライトが揺れていたのが印象的だった。ライブとはいえ、あくまで『王ステ』というコンテンツの空気感をクルーたちが大切にしていることがよく分かる。
1曲目は『葬列の王』より『薔薇色の人生』。客席が白のペンライトで染まる。時を超えてシリーズ内のさまざまなキャラクターが集う本ライブでは、『黒の王』はダークバイオレット、最新作の『虚の王』は黄色……というように、作品タイトルごとに公式のペンライトカラーが決まっており、基本的にはその色を振っているクルーが多く見られた。5曲目の『死して永遠となれ~ver.黄昏の王~』では、原曲が『屍の王』であることからオレンジのペンライトが輝き、映像内のダグラス(上仁樹)が振る旗の色と重なって見えたのが印象的だ。また、6曲目の『ワーテルヘーゼンヨーソロー』は同じく『屍の王』のナンバーだが、海賊の楽曲ということで、青のペンライトが採用されており、客席が一面、海のようにも見えた。こういった一体感を味わえるのがライブ、および上映イベントの醍醐味だろう。

特にクルーたちの一体感を覚えたのは、12曲目『夜の向こうで王となれ~ver.5th~』の冒頭のジェリコがつくり出す沈黙を、客席も固唾を飲んで見守る場面だった。ライブ本番の劇場でも、映画館であっても、この緊張感は変わらないのだと感じた。また、『星になる~ver.黄昏の王~』、『イケメンソング~ver.蒼穹の王~』、『スパーク』が続くパートは、さまざまなキャラクターたちの夢のクロスオーバーが見られる盛り上がりポイントだった。ヴェルナー(輝山立)の煽りに合わせ、ペンライトを使ってウェーブをする場面では、映画館であってもキラキラとしたピンク色の波が見られた。
熱狂のライブパートを経て、イベント後半はお待ちかねのアフタートーク。第2部には、第1部から引き続き、佐藤弘樹(ヴラド役)、鵜飼主水(ヴィンツェル役)、MCとして高岡裕貴(フーゴ役など)、そして第2部のみ、構成・作詞・演出の吉田武寛が登壇した。

ライブ映像を振り返りつつ、今だから話せる稽古場の裏話で盛り上がるキャスト陣と吉田。稽古期間が10日間ほどだった2024年の王ステライブと比べると、今回は3週間近く稽古期間があったそうだが、短期間で仕上げたライブの感覚が抜けず、常に前のめりなキャストが多かったと構成・演出補佐も兼ねていた高岡が語る。「今回は長めに稽古期間がありますと伝えても、みんなが予習をするから、逆に僕と吉田さんが組んだ稽古プランが崩れてしまって、こちらは大焦りでした(笑)」と嬉しい誤算があったことを明かした。

また、本番の裏話では『SERVANT~忠実なる僕~』のパフォーマンス時に、殺陣振付を兼ねる鵜飼が袖から槍を投げる役割を担っていたが、1度スタンバイを忘れていたことがあったという衝撃のエピソードが飛び出した。「ガンダ(全力ダッシュ)して間に合いました……」と反省する鵜飼に対し、佐藤が「一体何が(横を)通り過ぎたんだってくらいの勢いで走ってきた」と目撃情報で追撃し、会場が笑いで包まれた。しかし、「あんなに焦って投げた割に(投げた槍の)軌道は完璧だった」そうで、当日客席から観ていた観客には分からない、まさに裏話である。

吉田が印象に残っているのは、稽古場で演出助手のスタッフに何か曲をランダムで流してもらって踊りだすキャストたちの姿だという。まるでイントロクイズをしているかのようで、「いったい何の稽古、いや、競技をしているんだ……?」と思いながら見ていたと笑った。高岡も「演出助手のスタッフさんをもはやDJって呼んでいました」と話し、楽しく前向きな稽古場の様子がうかがえた。
楽曲についての振り返りでは、ライブならではのアレンジも話題に。8月に待望の再演が控えている『黒の王』のテーマソングについて、佐藤と鵜飼が「何回やっても入りが難しい!!」と訴え、無音の空間で歌い始めることの難しさを語る場面もあった。8月の再演では、また何か新たな演出やアレンジが加わっているのか、楽しみに待ちたい。
吉田と高岡は『蒼穹の王』のテーマソング『花は枯れない』のアレンジが好きだと語り、特に吉田は、ライブもいいが、CDで聴くことができるオリヴァーの落ちサビをオススメした。また、冒頭のセオドア&シオドア(二葉勇&二葉要)のパートは、今回は橋本真一と磯野大が歌ったが、前回のライブでは馬越琢己と森田晋平が歌っており、どのペアにもそれぞれの良さがあると語り合った。
そこから、話題はキャストの声出し(発声練習)に。「みんな、開演前に声を出し過ぎ!」とのことで、お客様が客席内に入っていてもなお、楽屋の廊下で、全力で声出しをしている様子が暴露された。特に目立つのが米原幸佑だそうで、鵜飼は「彼は特殊な訓練を受けている」と語り、佐藤も「いつでも、どこの楽屋にいても聞こえてくる」と語った。しかし、高岡が言うには「一応、配慮してシャワールームに立てこもって歌っている」のだそうで、「それでもあんなに聞こえてくるの!?」と改めて一同で米原の声量に驚くこととなった。

ライブならではの話題では、衣装の動きづらさの話も……。特に『黄昏の王』や『屍の王』のヴラドの衣装は腕を振るのが難しいそうで、佐藤は「『屍の王』の時の衣装は本当に重いカーテンを纏っているようだった」と表現した。一方で、『黎明の王』では非常に軽くなったそうで、シリーズによって可動域がかなり変わる様子であった。
アフタートーク終盤では、王ステの今後の展望の話に。吉田がエイプリルフールに自身のSNSでつぶやいた“宇宙戦艦ヴラド”については、キャストたちからも激しい追及があったが、「やるかもしれないし、やらないかもしれないし……」と一旦言葉を濁しつつも、「本編が重いストーリーなので、それとは別で外伝やコメディをやってみたい」と意欲をみせた。さらにはボイスドラマで外伝や日常の話をやってみるのもいいのではという提案や、メディアミックスへの展望も。また、今回のような大掛かりなライブだけでなく、ディナーショー形式で、小規模なライブをやってみたいという意見も出た。過去には「サントラ一揆」が起きて待望のCDが発売された経緯もあり、クルーの熱意を汲んでどんどんと大きく成長している王ステだけに、今後の発展にも期待をしていきたい。

最後に、8月の『黒の王 –Revenge-』への想いとともに、出演者が集まったクルーたちに感謝の言葉を送った。高岡は初演の『黒の王』のラマザン役が初めて本格的に殺陣に挑戦した作品だったと語り、「そこからいろいろ学ばせていただいて、たくさんの経験を積んだ今だからこそできる『黒の王』に全力で挑みたい」と意気込んだ。鵜飼は「ここまで歌いながらステージングをする舞台は『黒の王』が初めてだったので、6年経った今、当時の反省を活かしながら、皆様の期待に応えられるよう進化した姿を見せたい」と語った。
佐藤は「僕たち(佐藤と鵜飼)がヴラドとヴィンツェル役で合っていますよね!?」とボケをかましつつも、「6年の間にたくさんの方々が新たに興味を持ってくださって、こんな素敵な映画館でイベントができるようになりました。そんな中で、この『王ステ』の始まりの物語をお届けできるということを僕自身も大変嬉しく思っていますし、誠心誠意を込めて、納得していただける作品をお届けします」と万感の想いをクルーに伝えた。
締めを任された吉田は6年前、コロナ禍真っ只中に行われた初演を振り返り、8月の『黒の王』はまさに“リベンジマッチ”になると語った。結びには「基本的には再演ということで、物語のベースはそのままに、新しく今回ならではの『黒の王』を創っていきたいと思いますので、ぜひお楽しみに」と締めくくった。

6年前にはなかった新宿のランドマーク・東急歌舞伎町タワーの109シネマズプレミアム新宿で上映イベントができるほどに成長をした「王ステ」シリーズ。その始まりの物語を再び描いた『黒の王 –Revenge-』と、そこから新たに紡がれる物語、そして楽曲が、いつかまた集大成のライブという形で観られることにも期待したい。
Text by :通崎千穂(SrotaStage)
pohto by:香月梨沙



