2026.05.02MAGAZINE

咲女喜劇『溶く嘘、しょこらと咲き誇り、』観劇レポート│花とお菓子と甘い嘘

花とエンタメで人の心と心を紡いできたILLUMINUSのワンシチュエーションコメディシリーズ『咲女花劇』。今作からシリーズ名を新たに『咲女喜劇(しょうじょきげき)』と銘打ち、第5弾となる『溶く嘘、しょこらと咲き誇り、』が、2026年3月に上演された。

 

お花屋さん、葬儀場、占い師、教会……とこれまで様々なシチュエーションで『花』をテーマに笑いと感動を紡いできた本シリーズ。今回は『花×お菓子×喜劇』をテーマに、パティスリーを舞台に展開される。

 

甘くてほろ苦い“嘘”の物語を描く、極上のワンシチュエーションコメディの模様をレポートする。

 

姉妹の誇りがぶつかり合うキッチン

物語の軸となるのは、対称的な二人のパティシエール。華やかな三つ星パティスリー「Le patisser châtaigne(シャテーニュ)」の代表で、天才パティシエールを自負する姉「まろん」。

 

一方で、突如姉の前から姿を消した妹「しょこら」は、闇のパティシエ集団「ウルフギャング」の中心人物として現れる。「ウルフギャング」は、有名店のお菓子をシェフ本人になりきって生み出し、本物を凌駕するクオリティで世間を騒がせる謎の集団だ。

 

光り輝く「三つ星」と、闇に咲く「贋作」。パティシエール姉妹の対立劇を中心とした騒動と人間模様が描き出される。

 

「駕糖(がとう)しょこら」を演じるのは沖侑果。ILLUMINUS作品では『女王ステ』シリーズ『楽園の女王』で主演の1人を務めたほか、23作品では『麗和落語』にも出演している。

 

本作では、地下のキッチンで絵を描き、感動的な洋菓子を生み出す「影の天才」を好演。クールビューティーな佇まいからは想像もつかないほどぶっ飛んだコメディやシュールなボケで、客席をじわじわと笑いの渦に引き込む。また、物語の終盤に見せる「妹らしさ」が覗く繊細な表情の変化も印象的だ。

対する姉「駕糖まろん」を演じるのは里菜。『麗和落語』『TOKYO COL-CUL COMEDY』など23作品への登場経験がある。

 

姉として、なにより世界一のパティシエールとしての凛とした姿は、物語の芯となる真面目なパートを担っている。かと思えば、ひとたびコメディパートへ転じれば圧巻の振り切りを見せる。その幅の広さが観客の心を掴む。

 

煌びやかな洋菓子のように、個性が爆発する登場人物たち

姉妹を取り巻く仲間たちのキャラクター性も、本作のスパイスとなっている。

 

皿を割り続ける皿洗い担当の「砂島とうこ」(演:黒澤美澪奈)、おいらんのような言葉を操る和菓子職人の「粒越あんこ」(演:望月ゆみこ)、訛りが強すぎて情熱だけが先行するオーブン担当の「予熱ねつみ」(演:髙橋彩香)など。

 

ほかにも、どこか変だけど憎めない、愛らしいキャラクターたちが舞台を彩る。その姿は、さながらショーケースに並ぶ色とりどりの洋菓子のようだ。

加えて、シリーズ過去作からのキャラクター達も登場。第1弾『咲く声、ふわらと舞い降りて、』以来の登場となる「然田ぜん」(演:日和ゆず)は、一言発するだけで空気を面白く変える爆発力を発揮。第2弾『散る君、うららと舞い上がり、』から登場する「三鳥みどり」(演:黒崎澪)は、「何でも屋」として物語を回すポジションを担う。

 

そして、シリーズ通して登場する“普通の”お花屋さん「桐野りのこ」(演:植野祐美)も、もちろん今回の騒動に巻き込まれていく。作・演出の23氏は「【りのこさんがどうなれば面白いだろう】が僕の中の咲女シリーズを作るときのテーマです」とコメントしている。その言葉通り、彼女の巻き込まれ体質と冴えわたるツッコミがあるからこそ、周りの面々が心置きなく暴れ回れるのかもしれない。

 

23氏の生み出す、多層的な笑いの世界

作・演出はILLUMINUSで多くのコメディ作品を手掛けてきた23氏。元お笑い芸人という経歴も持つ彼の作品には、笑いを中心とした心温まる物語が息づいている。

 

言葉、動き、空気感の全てを使って笑いを表現する。「どうしてお菓子を作っているだけでもこれほど面白く演出できるのだろう」と筆者は何度も思った。腹が捩れるほど笑ったあとには、「笑いとはこんなにも多様だったのか」と、「笑い」の底の深さに感心してしまうほどであった。

 

中でも2つのパティシエチームが入り乱れる場面は、突拍子もないコメディ要素と、お菓子職人としての矜持がぶつかり合うシリアスなドラマが絶妙なギャップを生み出す見どころだ。

そして、キャストたちがその緻密な“23氏ワールド”の台本に全力で応えてみせるのが立派だ。女優たちが、変な顔やポーズ、古典的な笑いの技術を駆使して全力で挑む。自身の殻を打ち破る度胸と熱量が素晴らしく、彼女たちの新たな魅力も引き出している。

 

緻密に計算された「キッチンの魔法」

「キッチンワンシチュエーションコメディ」の通り、舞台は始まりから終わりまでキッチンで展開される。固定された1つの舞台セットでありながら、照明や演出によって「しょこら側」と「まろん側」の場面が交互に、時には同時進行で展開される。

舞台装置を移動させて場面転換を行う舞台とは異なり、1つの舞台セットをじっくりと堪能できるのも、本シリーズの名物ではないだろうか。まるでお菓子の家を具現化したような舞台美術は、フライパンの質感や流し台の細部まで再現されている。チョコレートを垂らしたような壁や苺の断面の壁面など、美術担当の腕が随所に光る。

 

花が導く、伏線回収のフィナーレ

シリーズでは一貫して「花」が物語と心情を象徴するモチーフとして描かれてきた。本作では、チョコレートのような甘い香りを放つ「チョコレートコスモス」が登場する。

 

騒動のきっかけとなった花の送り主は誰なのか。評価に囚われていたまろんが忘れていた初心や、しょこらの純粋な願いとは。タイトル​「溶く嘘」の正体とは。物語の至る所にちりばめられた伏線は、多幸感溢れるフィナーレに繋がる。

 

繰り広げられるドタバタ劇の末に訪れるほっこりとした温かさ。姉妹という近いようで難しい距離感を描いた人間ドラマが、観客の心にチョコレートのように静かに溶け込んでいく。

 

キャストたちの度胸が客席に灯す、笑顔の灯火

ここまで数々の見どころを挙げてきたが、結局のところ「稽古場スペース配信」にてキャストが口々に語っているように「何も考えずに観てほしい」という言葉、これに尽きるのではないだろうか。

 

目の前で繰り広げられる全力のドタバタに身を任せ、ただ笑う。それこそが本作の最大の楽しみ方だ。

公演中には客席から温かい笑い声もよく聞こえ、そこまで含めて本作品は完成するのだと強く感じた。キャストや演出家を含め、作品に携わるすべての人々が全力で「笑い」を楽しみ、それが観客にも伝播しているようだった。

 

だからこそ、笑いの中に確実に芯を持つ人間ドラマに、我々は自分のことのように心を揺さぶられるのである。

 

最高に「んま!」な大団円へと向かう、甘く、ときにほろ苦い“しょこら”のような物語を、ぜひ“味わって”ほしい。

 

Text by 河村ゆりな

 

 

 

咲女喜劇「溶く嘘、しょこらと咲き誇り、」公演概要

 

 

【公演名】

咲女喜劇「溶く嘘、しょこらと咲き誇り、」

 

【作・演出】

23

 

【スケジュール】

2026年3月18日(水)〜3月22日(日)

 

3月18日(水)19:00

3月19日(木)19:00

3月20日(金)14:00/19:00

3月21日(土)13:00/18:00

3月22日(日)12:30/16:30

 

【会場】

六行会ホール

 〒140-0001 東京都品川区北品川2-32-3

 

【Introduction】

ILLUMINUSがお送りする花とエンタメで人の心と心を紡いでいく、ワンシチュエーションコメディシリーズ『咲女花劇』。

 

脚本は『麗和落語』や『TOKYO COL-CUL COMEDY』などILLUMINUSで多くのコメディ作品を手掛ける23(ニーサン)が担当する。

 

第二弾「散る君、うららと舞い上がり、」からは演出も23が行い、定評のあるキャストの個性を活かした笑いと、綿密に計算された脚本による伏線回収で会場を感動の渦に包にんだ。

 

2021年夏に第一弾「咲く声、ふわらと舞い降りて、」を上演。

主演には白石まゆみ、植野祐美を抜擢。

 

2024年冬に上演した第二弾「散る君、うららと舞い上がり、」では主演、浦うらら役を西村菜那子が演じた。

 

同年夏には第三弾「摘む夢、きららと舞い込んで、」を上演。

主演は綺羅きらら役を新井ひとみ(東京女子流) 、賛田ゆめ役を石井陽菜が務めた。

 

2025年2月に、第四弾「結ぶ手、けせらと咲き乱れ、」が上演。

主演は生田輝、小山百代がW主演を務めた。

 

そして2026年3月にシリーズ名を新たに、咲女喜劇「溶く嘘、しょこらと咲き誇り、」の上演が決定。

 

【あらすじ】

花×お菓子×喜劇

 

日本が世界に誇る有名洋菓子屋さん

 

Le patisser châtaigne(ル・パティシエ・シャテーニュ)、

 

代表の天才パティシエール「まろん」は

 

日々天才的なお菓子を仲間と作り上げる。

 

そんな輝く姉の影には、

 

表舞台には絶対に出せない妹の存在が…

 

姉まろんも知らない、妹「しょこら」の仕事。

 

それは、ゴーストパティシエール。

 

真っ暗な地下のキッチンが彼女の仕事場。

 

暗く陰湿な彼女の周りには

 

同じような影の職人が集まってくる。

 

そんなある日、大事件が巻き起こる!? 

 

嘘は二転三転し、真実が溶け残る。

 

みんなで力を合わせて、甘く熱く乗り越える

 

キッチンワンシチュエーションコメディー。

 

みんなの悩みは溶け、咲き誇れる日は来るのか?

 

その味は嘘かホントか…

 

 【出演】

沖侑果

里菜(LumiUnion)

高畑結希

堀内まり菜

由良朱合

船戸ゆり絵

黒澤美澪奈

村田寛奈

髙橋彩香

日和ゆず

望月ゆみこ

蒔埜ひな

濵田響(STU48)

 

黒崎澪

植野祐美

 

声の出演 武井雷俊

 

【『咲女喜劇』公式X】

https://x.com/Sakukoe_Fuwara?s=20

#咲女喜劇

#溶く嘘しょこら

 

【お問い合わせ】

contact@illuminus-creative.net 

(ILLUMINUS運営事務局)

 

【企画・製作】

ILLUMINUS

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