令和女優が紡ぐ落語の世界
2026年1月10日から11日にかけて上演された『麗和落語~二〇二六 冬の陣~』。2021年の旗揚げ以来、「令和女優 × 落語」という独自のスタイルで注目を集めてきた『麗和落語』シリーズは、今作で第十二弾を迎えた。
本公演は二日間、全六ステージで開催。出演キャスト八名のうち、各公演ごとに四名が日替わりで登場し、一人落語四席、二人落語二席が披露される。演者の組み合わせによって毎公演異なる表情を見せる点も、本シリーズの大きな魅力だ。
それでは早速、本作の見どころを紹介していこう。
装置ゼロだからこそ広がる、“想像力の舞台”
ステージに置かれるのは、ただ一枚の座布団のみ。客席からの「よっ!」という掛け声、そして三味線の音色に導かれるように、キャストが登場する――落語ならではの様式美が、観客を一瞬で作品世界へ引き込む。
普段、舞台装置や照明、音響演出が充実した舞台を観劇することに慣れている筆者にとって、“何もない舞台”で物語が紡がれていく体験は非常に新鮮だった。そこにあるのは、演者の身体と言葉、そして観客の想像力のみ。だからこそ、一つひとつの所作や語りが、より鮮やかに心へ届く。
「麗和落語」で披露される演目は、すべてオリジナルの「現代落語」。古典落語の形式を踏襲しながらも、「終電」「通勤」「スマホ」「キラキラネーム」など、現代を生きる私たちにとって身近なテーマが巧みに盛り込まれている。和の世界観と現代的な題材を行き来する感覚が小気味よく、観ているうちにその独特の魅力に引き込まれていく。
扇子をスマートフォンに見立てたり、床を叩くことで衝突音を表現したり。たった一人の演者が生み出す情景は、観客の脳裏に映像を描き出す。笑いに満ちた演目もあれば、思わず胸が温かくなる物語、しっとりと心に沁みる人情噺もあり、多様な落語の楽しみ方に好奇心をかき立てられた。
脚本・演出を務めるのは、『咲女花劇』や『TOKYO COL-CUL COMEDY』などILLUMINUSで数々のコメディ作品を手掛ける23氏。銀行員の制服、革ジャン姿の人物、改札で足止めされる残高不足――そんな具体的なモチーフが、語りだけでくっきりと浮かび上がる。演者の表現力はもちろん、緻密に練り上げられた脚本の力が、本作を支える大きな柱となっている。
八者八様――個性が光るキャスト陣
初日公演のトップバッターを飾ったのは由良朱合。手毬を転がすような軽やかで愛らしい声が会場の空気を一気に和ませる。個性的な登場人物を、豊かな表情と仕草で演じ分け、語りだけで観客の視界に物語の情景を浮かばせる。

続く鈴木杏奈は、ハリのある声と晴れやかな笑顔で舞台を牽引する。ポジティブでコミカルなキャラクターの、その魅力をさらに引き出すように演じていく。

本西彩希帆は対照的な二人の女性を軸に、声色や表情を自在に変化させる七変化の演技を披露。テンポの良い語り口と相まって物語は軽やかに加速し、観客を笑いの渦へ巻き込んだ。

柔らかく落ち着いた語りが印象的な野村麻衣子は、落語らしい端正な語り口で、物語の世界観を丁寧に紡ぎ上げる。

浅井七海は自身の落ち着いた雰囲気から一転、演目が始まると個性的なキャラクターへと大胆に変貌。

八巻アンナは艶のある声質が際立ち、語られる言葉の一つひとつから鮮明な情景を立ち上げる。

力強い声を武器に多彩な人物像を巧みに演じ分けるのは田辺留依。若い女性から威厳ある殿様まで、表情と声色を駆使した変幻自在の演技が光った。

礒部花凜は本編に入る前の導入部「マクラ」から観客を積極的に巻き込み、会場の一体感を高める火付け役として存在感を発揮した。

また、本作の醍醐味の一つである二人落語では、公演ごとにキャストの組み合わせが変化する。同じ演目であっても、演者が変わることで物語の印象は大きく変わる。テンポの良い掛け合いが生み出す心地よさも見逃せない。
観客とともに完成する、“生”のエンターテインメント

「推し」を目当てに劇場を訪れるのも良い。新たな推しと出会うのも良い。そして、落語そのものの魅力に触れるきっかけになるのもまた、本作の大きな価値だろう。
キャストたちの凛とした袴姿や、公演ごとに変化するヘアアレンジも視覚的な楽しみの一つ。回を重ねるごとにキャストの緊張がほぐれ、観客も落語独特の空気に慣れていく。初日は控えめだった掛け声も次第に大きくなり、舞台と客席が一体となって作品を作り上げていく様子が強く印象に残った。
本作に出演するキャストの多くは、普段は声優や女優として活動している。台本に頼らず、たった一人で物語を語り続ける落語という表現は、計り知れないプレッシャーを伴うはずだ。演目が全て終了してから、「おまけ」のフリートークのコーナーがある。戦った直後の女優たちの素の声が印象的だ。実際、キャストたちは口々に「緊張した」と語り、クリスマスや年末年始でさえ落語を繰り返し唱えていたという。
そうして磨き上げられた“魂の語り”が、舞台上で花開く。その瞬間に立ち会えるのは、劇場に足を運んだ観客だけの特権だ。
笑い、驚き、そして温かな余韻。
演者と観客がともに呼吸を合わせ、ひとつの物語を完成させる――それこそが、『麗和落語』が持つ最大の魅力なのかもしれない。
Text by 河村ゆりな
『麗和落語~二〇二六 冬の陣~』公演概要
-1024x724.png)
【公演名】
『麗和落語~二〇二六 冬の陣~』
脚本・演出:23
【日程】
2026年1月10日(土)~1月11日(日)
【会場】
武蔵野芸能劇場小劇場
【About】
令和に生きる麗しき女性が演じるILLUMINUSオリジナル現代落語シリーズ「麗和落語」の第十二弾。忘れかけていた美しい日本語を題材にした創作落語を、令和に生きる女性たちが演じます。
【出演】五十音順
浅井七海
礒部花凜
鈴木杏奈
田辺留依
野村麻衣子
本西彩希帆
八巻アンナ
由良朱合
【公式HP】
https://www.reiwa-rakugo2026.com/
【公式X(旧Twitter)】
https://twitter.com/reiwa_rakugo
#麗和落語
【企画・製作】
ILLUMINUS



