2021年の第一作から、回を重ねるごとに熱量を増してきた「勤人(リーマン)落語」シリーズ。その第八弾となる『勤人落語Ⅷ』が、2026年2月18日から3日間にわたり上映された。
本作が描くのは、奮闘するサラリーマンのエピソードを題材にした現代落語。「落語」の形式を取りながらも、舞台上に現れるのはスーツ姿の人気俳優たちだ。
現代社会という戦場で戦う人々へ贈る、まるでヒーローショーのような爽快感に満ちたステージ。その模様をレポートする。
日常を鮮やかな物語へと変える仕掛け
ステージに置かれた一枚の座布団。そんな落語の形はそのままに、スクリーン投影やBGMといった現代的な演出が加わり、古典の枠を超えた心地よいハイブリッドなエンターテインメントを体験できた。
脚本・演出を務めるのは23氏。『咲女花劇』や『TOKYO COL-CUL COMEDY』など、これまでもILLUMINUS内で数々のコメディ作品を手掛けてきた。
「昼休憩」や「社員旅行」といった身近なテーマを、ドラマチックで予測不能なワールドへと増幅させる。キャストの魅力を存分に引き出すとともに、観客の想像力をこれでもかと掻き立てる構成力には、ただただ感服するばかりである。
独自の色がある「現代の語り部」たち
上仁樹は、社員旅行をテーマに、元気系とおっとり系という正反対の登場人物を演じ分ける。リズミカルな掛け合いでポンポンと話が展開していく様子は、なんとも癖になる。一人で演じているはずなのに、まるで漫才でも見ているかのようだ。そこにはボケとツッコミの二人組が存在し、マイクの前でテンポよく掛け合いをしているような錯覚に陥る。

シリーズ初参加の田中晃平は、本編に入る前の「マクラ」から観客の心を一つにする。舞台上には存在しないはずの缶ビールや、すすり泣く女性の姿がありありと浮かび上がる「演技の解像度」は圧倒的だ。女性のしなやかさと男性のワイルドさを見事に演じ分けていた。

木村優良は、軽妙な導入で場の空気を緩ませたかと思えば、本編に入った瞬間、凛々しい声で落語を語り始める。その見事な切り替えと、堂々として揺るがない振る舞いに、これが落語初挑戦とは驚きだ。23氏の脚本では稀に見る登場人物の多さだという「8役」を軽やかに攻略していく様は圧巻であった。

日向野祥は、渋い声とコミカルな演技のギャップで観客を虜にする。一人芝居ならではの「心の声」の表現が秀逸だ。伏線回収の鮮やかさと「オチ」へ向かう収束力に、会場全体が一体となった。筆者は「麗和落語」にて同演目を聴いたことがあるが、キャストが変わることでここまで雰囲気が変わるものかと新鮮に感じた。

同じ台本でも、演者の個性や表現が加わることで、それぞれが「自分の落語」として生まれ変わるのが鮮やかだ。
ライブならではの「共創」、そして明日への活力
「サゲ」と呼ばれる落語のオチには、だじゃれや伏線回収のほかにも、よく考えると意味が分かる「考えオチ」、テンポよく進みながらその勢いのままオチとなる「トントンオチ」など、様々な種類がある。本公演でも、笑いを生むものもあれば、観客席から「おお…」と驚きや感心の声が漏れるものもあり、なんとも多彩だった。落語という表現の面白さを、また一つ知ることができた。
演者と観客がその場の空気を作り上げる、「生きている芝居」としての醍醐味をありありと感じ取れた。実際、全ての演目が終了したあとの「おまけ」のフリートークでは、キャストから「『ここで笑うんだ』といったお客さんの反応が変わると演じ方も変わる。それも面白さの一つ。だんだんと落語のリズムをお客さんも掴んできて、空気が作られていく」といった言葉もあった。
その通り、たとえ同じキャスト、同じ演目でも、その日のキャストと観客が一体となって作り上げる空気感によって、受ける印象は変わるだろう。それこそが、ライブならではの「共創」だ。
一席20分の演目だが、次から次へと話が展開され、体感ではわずか3分に感じられるほどの爽快感があった。一人で20分間、観客の視線を釘付けにするキャストの熱量と、23氏の巧みな舞台づくりには圧倒されるばかりだ。
思う存分笑ったあとには、「明日からも頑張ろう」と思える温かな活力が胸に宿っていた。現代社会で戦うすべての人々に、このホッと贅沢なひとときを捧げたい。
Text by 河村ゆりな
「勤人落語Ⅷ」公演概要

【公演名】
「勤人落語Ⅷ」
脚本・演出:23
【日程】
2026年2月18日(水)~2月20日(金)
【会場】
東京カルチャーカルチャー
【About】
奮闘するサラリーマンたちのエピソードやオフィスでのシチュエーションを題材とした現代落語を、スーツを身にまとった人気俳優たちが演じるシリーズ「勤人(リーマン)落語」。男たちが挑戦する「勤人(リーマン)落語」の世界をお楽しみください。
【出演】五十音順
木村優良
上仁樹
田中晃平
日向野祥
【公式HP】
https://www.ree-man-rakugo.com
【公式X(旧Twitter)】
https://x.com/ree_manRakugo
#勤人落語
【企画・製作】
ILLUMINUS



