25.4.26舞台はウイスキーの原液だと思う

待ちのぞむ

ハイボールから始まる観劇体験 -SKETCHに込めた想い-

「Life with Live」。
舞台やライブのわくわくや感動を、日常でより楽しんでもらいたい──。
その構想を実現するために生まれたサイトが「SKETCH」です。

 

観劇の“入口”をひらき、観劇後の“出口”を豊かにする。
体験のすべてを総合的にデザインすること。
それが、私たちのSKETCHに込めた想いです。
なぜ「入口」と「出口」を大切にするのか。
そのきっかけになった、ひとつの体験があります。

 

私はお酒が好きで、毎日のようにハイボールを飲む。
飲み始めると、無限に飲めてしまう。
最近ではボトルでウイスキーを買い、気分がいいと、ハイボールから水割り、ロック、最後はストレートへ……というルートを辿ってしまうこともある。(そして、時には飲みすぎる)

ハイボールという“入り口”

実はこのハイボールという飲み方、長く低迷していたウイスキー市場を立て直すため、サントリーが仕掛けた戦略だった。

 

「ボトルではない、別の売り方、飲み方を提案する」

 

という思想のもと、「角ハイボール」が登場し、
“とりあえずビール”の座を奪いにいった。

 

結果、ウイスキーは再び文化になった。
かつて“おじさんの酒”と言われていたものが、
今では若者も楽しむ“ライフスタイル”の一部に変わった。

 

私自身も、その戦略に見事にハマったひとりだ。
最初は、飲みやすいハイボールからだった。
でも気づけば、「もっと深い味を試してみたい」と思うようになった。

やがてストレートやロックにも手を伸ばし、銘柄を調べ、ボトルで買うようになっていた。

 

「最初に飲んだあれが、美味しかったから」

 

——入り口が優しかったからこそ、私はウイスキーの世界に入ることができた。

舞台も、同じなんじゃないかと思う

舞台というコンテンツは、実はとても特殊だ。

- 時間も場所も決まっている
- 飲食も禁止
- スマートフォンの電源もオフにしなければならない
- しかも決して安くはない

 

現代のコンテンツ体験とは真逆の、強く“制限された環境”の中で行われる。そのうえ、内容はとても濃い。2時間にわたって、俳優の“生”の熱量と、壮大な物語を浴びるように体験する。

 

それはウイスキーの“原液”をいきなりストレートで飲むようなものだ。馴染みがない人からすれば、やっぱりハードルが高い。

私たちが考える、“ハイボール”のつくり方

だからこそ、私たちは考えている。

 

「どうすれば、観劇前に“ハイボール”を飲んでもらえるか?」

 

- シリーズ作品なら、過去作の一部を無料配信する
- 世界観やキャラクターの“予習”コンテンツを提供する
- 創作の裏側や制作過程をSNSで共有する

 

舞台を観る前に、「味わい方」を少しでも知ってもらう。それだけで、初めての人にもぐっと楽しみやすくなる。

 

そして終演後には、

- グッズや配信、円盤の販売
- アフターイベントの開催

などを通じて、作品の余韻を“ちびちび”日常の中で楽しんでもらう工夫もしている。

これらは単なる宣伝や二次展開ではない。“観劇体験の入口と出口を整える”ことだと、私は思っている。

本質にたどり着いてもらうために

最終的に体験してほしいのは、
舞台という原液の、濃厚な美しさだ。
でも、そこにたどり着くには、ハイボールのような、馴染みやすく、気軽で、楽しい入口が必要だ。だから私たちは、作品そのものだけでなく、その前後に広がる“体験のデザイン”にも力を注いでいる。

 

私がハイボールからウイスキーを好きになったように、舞台もまた、最初の“一杯”が、誰かの人生を変えるかもしれない。

 

その一杯が、私たちの作品であり、
そして「SKETCH」で描かれる体験であれば、
こんなに嬉しいことはない。

 

 

Text  小宮山薫

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