「千秋楽まで無事に興行できる――これは奇跡」プロデューサーと脚本・演出家が語る、演劇業界で働くこと

数々の舞台作品を制作してきた株式会社ILLUMINUS。興行が難しいこの時期にあっても、さまざまな媒体でコンテンツを生み出している。そんなILLUMINUSの代表取締役でプロデューサーの小宮山薫と、多くの作品で脚本・演出を手掛ける吉田武寛。2人に演劇業界で働くことについて話を伺った。観客の心を動かす感動体験をどのように生み出しているのだろうか。

取材・文:春日康徳 

舞台からイベント興行、映像、2.5次元作品など。ILLUMINUSが手掛けてきた作品の数々

ILLUMINUSは『家族のはなし』『Acrobat Stage「Infini-T Force」』『ゴシックは魔法乙女~さっさと契約しなさい!~』『PLAY JOURNEY!』など、舞台演劇を軸として、さまざまなアプローチでコンテンツを世に送り出している。

――ILLUMINUSでは、どのように企画を進めていらっしゃっているんですか?

吉田:基本的に小宮山さんが外枠を考えて、「だったらこうですかね?」と僕は中身の部分を提案させてもらうということが多いですかね。

小宮山:告知した時に、「こういうのがあったら面白いよね」「意外性があるよね」とか。お客さんの熱狂的な反応。そういう視点で考えていたりします。

吉田:小宮山さんは、人とのつながりを大切にされてますよね。『PLAY JOURNEY!』で公演したスペースって、もともと、小宮山さんがいつも宿泊していたホステルだったんです。仕事になったから「すごいな」って。

小宮山:結構、何ていうんスかね。ちょっと大袈裟に言うと、「人と会って話すと、仕事が生まれちゃう」という感覚のときはあります。

ホステルのバーラウンジをエンタテイメントスペースとして有効活用したい――それが『PLAY JOURNEY!』の企画の原点だったという。

小宮山:これは営業のお話になるんですが。バーというのは夕方からの営業になるんですよ。実際にお客さんが入ってくるのは22時過ぎなんです。ピークタイムが22時から深夜の1時ぐらいまで。その時間帯で、1日の大部分の売上を稼ぐ。であれば、「アイドルタイム(隙間時間)で僕らはコンテンツを作って、集客して、ちゃんと売上を作って。なおかつそれがホステルのブランディングになったらいいですよね」というところから、実は『PLAY JOURNEY!』ってはじまったんです。作品としても好評を頂き、通常の営業時よりも売上増に成功しました。

小宮山:ちゃんと問題を解決してあげられないと、やっぱり一緒にコラボする人たちってメリットにならないと思うので。ご一緒することによって、何が問題解決になるか提案してあげないといけないと考えてますね。

ILLUMINUSの運営スタッフは現在7名(業務委託含む)。代表でプロデューサーの小宮山、脚本・演出でクエリエーターとして吉田、23がおり、制作3名、経理1名のスタッフを抱える。ほか公演にあわせて協力会社のスタッフや俳優がいる。当然ながら公演(プロジェクト)ごとにスタッフ・俳優は異なっていく。

小宮山:公演に関わっていただくキャストやスタッフ――脚本、演出、照明、音響、制作、販売など――それぞれ「プロフェッショナル」な人たちです。本当にルパンみたいに、仕事の時はガーッと集まって、終わったら他の仕事に去っていく。いろんなことに興味を持ち、さまざまな「プロフェッショナル」な方々と関わりながら、複数の公演(プロジェクト)を回していくようなイメージです。

吉田:みんな常に仕事を抱えていたり、なんかやっていますよね。僕も社外で演出の仕事をしたりもしています。

小宮山:定時で終わって「みんなで飲みに行こう!」そういうのはあまりないですね……。もちろん公演ごとの打ち上げはあります(さすがにこの時期はそれも厳しいのですが)。

小宮山薫


株式会社ILLUMINUS代表取締役。
東京・長野2拠点での生活しながら、ILLUMINUS公演全てのコンテンツ製作の総指揮を行う。アニメ・音楽・小説などの原作舞台から、ホステルや酒造メーカーなど、ブランドタイアップ作品など、ジャンル幅広くライブコンテツを企画・プロデュース。
 

吉田武寛


舞台演出家。脚本家。16歳から脚本・演出を始める。歌唱・ダンス・アクションなどを駆使した華やかで、ダイナミックな演出に定評があり、美しく幻想的な世界構築を得意とする。
近年は、ガールズ演劇や2.5次元舞台など、多種多様な作品を手掛ける。主な演出作品に、舞台『家族のはなし』、
舞台版『Infini-T Force』、
舞台版『ピオフィオーレの晩鐘~運命の白百合~』など

『PLAY JOURNEY!』

世界中から人が集まる東京のホステルを舞台に、旅を通して生まれたストーリーやアート作品をモチーフにした演劇シリーズ。2019年秋、「"ゼロ距離”&"体感"演劇」をコンセプトにWISE OWL HOSTELS にてスタートしたILLUMINUSの人気シリーズ。

夏目漱石(キンノスケ)と正岡子規(ノボル)の交流を描いた”京都”編。
キューバでの不思議な出会いと数奇な運命を描いた”キューバ”篇。
アジア数カ国を旅する中で出会った様々な人物たちとのエピソードを描いた”アジア”篇。

アジア編、キューバ編は、写真家・アーティストの須田誠氏のフォトエッセイを原案にしたストーリー。

Geki-Dra『PLAY JOURNEY!』In The Round


2020年コロナ渦で上演困難となり、デジタルライブ作品として演出を全て一新して生まれ変わる。マルチアングル撮影やVR撮影などテクノロジーの力を使った舞台作品の制作に挑む。
●Geki-Dra『PLAY JOURNEY!』In The Round公式HP
https://www.play-journey.online 

須田誠、スダマコトを撮る


写真家須田誠が、「PLAY JOURNEY!」シリーズでスダマコト役を演じた俳優、田中翔、鵜飼主水を撮影するという企画。コロナ時代に向き合う二人の俳優を、近づいて撮るというこれまでの自身の撮影スタイルを捨て、距離をとり、一切口を聞かず、信頼と、想像力を持って撮影に挑む。
2020年コロナ渦で予定されていた公演の大部分がなくなる中、舞台以外の新たな「チャンネル」の開発を積極的に行う。
●「須田誠、スダマコトを撮る」メイキングレポート
https://www.illuminus-creative.net/archives/8729

「エンタメ」というワードを軸に展開していくなかで、なぜ演劇のブランドを立ち上げたのかを訊く

――お二人は、どういう経緯でILLUMINUSを立ち上げたんですか?

小宮山:もともと別のメンバーと立ち上げたFreeK-Laboratoryの舞台事業としてスタートしました。そこではイベント運営、番組制作、アーティストグループの運営など”エンタメ”をキーワードに様々なことをやっていこうという中で、舞台っぽいものを何本かやるようになって。そのなかで吉田さんに朗読劇の演出をやっていただいたんです。

吉田:当時は二足のわらじでやっていましたね。僕は前職、システムエンジニアをやっていたんです。

小宮山:出会った時は吉田さん、サラリーマンやりながらで。「いつ執筆して、いつ寝ているだろう」と思っていました。

吉田:僕はもともと芝居をやりたかったので、なるべく早く帰れる会社に入って。今思うと、迷惑かけちゃったなって思います。

小宮山:吉田さんとご一緒した朗読劇作品で、センスがすごく良くて。音の入れ方とか光の入れ方とかすごくセンスがあって、お客さんの感情をちゃんと設計していて、「この人すごいなあ」と思ったのがきっかけです。

吉田:改めてそう言っていただくと素直にうれしいですね。

小宮山:そこで僕が舞台という方向に興味を持ちはじめまして。アートや音楽的なアプローチで演劇作品を展開したいという考えもあって、吉田さんにお声がけしてILLUMINUSを立ち上げました。

興行の難しいこの時期だからこそ感じる「奇跡」。 2人がやりがいを感じる瞬間とは?

小宮山:「興行」というビジネスって、包み隠さずに言ってしまうと「時の運」なんですよね……。何か一個の要素でものすごく変わるじゃないですか。コロナもそうですけど。台風が来ましたとか。そういった不確定要素で公演が飛んだりとか。毎月、当たり前のように今までやっていたんですけど、顔合わせから稽古を経て、本番初日明けて千秋楽までいくのってものすごく奇跡的なことなんだなと。最近は特に感じています。あとは怪我とか事故のリスクは演者には常にありますので。難しい側面もたくさんあります。

吉田:難しさで言うと、関わっているお客様とスタッフ。みんなに納得してもらえるものを作る大変さというのもあるかもしれませんね。最近、僕が思うのは、自分が作りたいものを作るというよりは、キャストが作りたいものをなるべく具現化しやすくするというか。それを最近は気をつけていますね。

厳しさや難しさに直面することもあれば、舞台演劇は観客の反応がダイレクトに返ってくる媒体でもある。お二人がやりがいを感じるのはどのようなときなのか?

小宮山:最初、規模感が小さいところからはじめて。同じシリーズが一年間で、例えば80人ぐらいの劇場から、再演からは150〜160人、さらに250人……。この変化というのも、単純にキャパシティ(席数)の変化のみならず、ちゃんとやってきたものが評価されて、いろいろ広がって、一回目は新人を中心に、身近なキャストでやったものが、シリーズを重ねていく中で、出たいキャストが集まってきてくれて……。それがなんかやるごとに変化が体感できると言うか。

吉田:『雨』(『花嫁は雨の旋律』)シリーズや『女王ステ』(『楽園の女王』)シリーズなんかがまさにそうですね。お客さんの反応によってシリーズが続いていく楽しさがありますね。

女王シリーズ


2019年、「誰も救われない、誰も報われない物語」をキャッチコピーに、血塗られた実在の悲劇をモチーフにし、女優のみで描いた”女王ステ”シリーズ。2019年の3部作「赤の女王」「楽園の女王」「純血の女王」の1stシーズンは、”女王ステ”をILLUMINUS不動の人気シリーズへと導く。2021年1月には1年ぶりに4作品目となる「女王輪舞」を上演予定。
●「女王輪舞」公式HP:https://www.jouou-rinbu.net
●作・演出:吉田武寛

小宮山:2018年に鉄拳さん原作のパラパラ漫画『家族のはなし』を初めて舞台化した際、作品の舞台にもなっている長野でも公演を企画しました。その時にNBS長野放送(フジテレビ系列の長野県の民放テレビ局)の方が取材に来てくれて、「次は一緒にやらせてくれ」と声をかけてきてくれたんです。それで再演を企画して、話していく中で、原作の鉄拳さんの地元・長野県大町でやりましょうと。「これはもう大町の人を巻き込んでやるべきだ」となって、その場で大町文化会館の人に電話して、劇場が決まった。協賛金の提供やPRの協力をしてくださることになりました。

吉田:作品を通じて、関わってくださるみなさんが、お祭りのように盛り上がってくださったのは嬉しかったですね。お客さんの喜んでいるところとか、スタンディングオベーションとか感動しますね、やっぱり。

家族のはなし

パラパラ漫画「家族のはなし」は、パラパラ漫画家鉄拳が2013年に信濃毎日新聞との企画として発表され、第17回「アジア太平洋広告祭」のフィルム部門、プレス部門でダブル受賞した作品。リンゴ農園を営む両親のもとを離れ、東京で仕送りを受けながら生活している主人公の青年が、ある挫折をきっかけに自分の進むべき道を失う。さまざまな挫折を経て家族の温かさを再発見しながら成長していく家族の姿を描き出す。2018年、2019年2度にわたり上演。原作の舞台にもなっている東京と長野を繋ぐ公演として企画。2019年の公演では、原作者鉄拳の地元でもある長野放送(NBS)開局50周年記念として、長野県大町市にて上演される。
●舞台「家族のはなし」公式HP:https://www.kazokunohanashi2019.com
●原作:鉄拳「家族のはなし」 /脚本・演出:吉田武寛

求められているものをカタチにする「柔軟性」とは?

今、制作スタッフを募集しているILLUMINUS。一緒に仕事をしていく仲間に求めるのは、「やったことがないことにも挑戦してみよう!」という柔軟性、チャレンジャー精神だという。

小宮山:コロナの問題で、劇場での興行が難しくなった時期。オンラインでイベントを楽しんでもらうためには、どういう形が考えまして……。『PLAY JOURNEY!』は、ライブ体験として最もふさわしいコンテンツだったので、推しのキャストさん視点で楽しめますよ、というマルチアングル視点の映像を配信しました。『喫茶ライフ』も「今の時期に何ができるか? 映像だ!」とドラマの制作に踏み切りました。

吉田:演劇だけをやっている会社だったら、おそらくできなかった企画でしょうね。演劇にこだわらずに、いろんな方面に挑戦できる、柔軟なスタッフ陣だったからいけたのかな。小宮山さんもそういう幅広くいろんなものに興味持ってやっていける人だし。僕も元々、映像の勉強をしていたってこともあって対応できました。結構、「自分たちには無理だ」と投げてしまうカンパニー(座組)もあるんじゃないかな。

小宮山:確かに柔軟というのは結構、重要かもしれないです。柔軟って、その都度その都度、合わせて変化していきましょうってことなので。変化していくことがストレスに感じてしまう人には難しいかもしれないですね。逆に日々、環境が変化していく。そういうことにワクワクできる人はとても向いていると思います。

喫茶ライフ

コロナ渦で予定されていた舞台公演が中止になる中、初めてドラマ制作を行う。作品は過去 2 度上演されたILLUMINUS不朽の名作「喫茶ライフ」。「再出発」をテーマに1人の老婆の人生の再出発をドラマとして描く。
●WEBドラマ「喫茶ライフ」HP:https://www.kissa-life.info
●脚本・演出:23 /監督:吉田武寛

求められているものをカタチにする「柔軟性」とは?

――キャストや現場も変わっていく。何なら、舞台の場合は劇場にいらっしゃるお客様が毎回違うわけですよね?

小宮山:企画がそれぞれあって、多角的なので、公演ごとに優先順位が変わってくると思うんです。「この公演ではこういう部分を大切にしましょう」という。的確に、柔軟に対応できる方がいいかと思います。

吉田:その他に僕が気をつけているのは、「自分のやりたいこと」というよりは、求められているもの・ニーズを形にしていく、みたいなところですかね。

小宮山:吉田さんは「柔軟性」という意味では、男性向けの作品も、女性ターゲットの作品も手掛けていらっしゃいますよね。

王ステ

女優のみによる演劇シリーズ「女王ステ」の男性俳優版として、2020年10月に上演。感染症対策を行いながらのシリーズの立ち上げ、第1弾『黒の王』は、15世紀トランシルヴァニアの英雄をモチーフに、運命に翻弄される者たちを描く。歌や殺陣・アクション・ダンスなどエンターテイメント作品として上演を行う。
●舞台「黒の王」公式HP:https://www.kingstage.net
●作・演出:吉田武寛

目標は365日公演!?よりたくさんのお客様に届けたい。ILLUMINUSの展望

コロナ問題に端を発する、興行が困難なこの時期にさまざまな媒体で「コンテンツ」を発信してきたILLUMINUS。最後にこれからのビジョンを訊いた。

小宮山:配信いろいろやってみて、「生」の体験にまさる感動はないなと改めて感じましたね。現状のたくさんの制約のあるなかで、お客さんに届けるためのコンテンツを作りつつ、コロナの問題が解消された時に、ちゃんとリアルな方に振り切れるように、今から準備していきたいですね。

吉田:僕は作り手なので、やはり規模の大きな作品を手掛けてみたいという野望はあります。なるべくたくさんのお客さんに楽しんでもらいたい。

小宮山:吉田さん仰るとおり、より多くのお客さんに届けたいですね。歌舞伎とかディズニーランドとかって、毎日やって、毎日人が来て、毎日感動して帰っていく。文化として根付いているエンターテイメントは毎日上演されていて、365日上演するニーズがあります。我々も365日上演を求められるような社会に必要とされるそんなヒットコンテンツを作りたいです。
演劇を普段、あまり観ないというお客さんにも広がっていくような、そんなエンタテイメントを作っていきたい――そんな想いを共有できる方とぜひ働きたいなと思います。

2020年2月「PLAY JOURNE!京都編」にて。WISE OWL HOSTELSのスタッフ、ILLUMINUSのキャストと。

スタッフ募集要項

株式会社ILLUMINUSでは下記のスタッフを募集しています。

雇用形態
常勤スタッフ・業務委託・正社員

仕事内容
① 企画・営業
② 舞台制作業務
③ 俳優マネージメント
④ ファンクラブ運営

業務内容

【具体的な事業内容、業務の流れ】

1)企画・会場手配
自分たちで自ら企画を考えることもあれば、様々な異業種の会社などからタイアップの依頼を受ける場合があります。興行になるための企画への落とし込み、適正な公演規模での公演計画を作り、会場を手配します。

2)制作
公演のコンセプトや内容、出演者をとりまとめ、多くのスタッフに業務依頼からリレーションまで取りまとめを行なっていきます。

3)広報・宣伝(プロモーション)
CM・テレビ・雑誌・新聞・SNSなどの各方面に向けたプロモーションを提案、実行します。
公演によって最適なプロモーション方法は毎回異なるので、準備した広告、チラシ・ポスターなどを使い、効果的で効率的なプロモーションの企画を行います。

4)チケット販売の管理
チケット販売を委託する会社(プレイガイド)へ、公演の座席をそれぞれ割り振り、一括して管理します。お客様は、我々がチケット販売を委託をした各プレイガイドを通して、公演のチケットを購入します。公演によっては、併せて企業や官公庁、学校向けに販売を斡旋します。
また、公演やチケットに関するお客様からの問い合わせについても対応しています。

5)公演当日の運営
公演前には、事前準備をし、タイムスケジュールを決定し、当日に備えます。
公演当日には、各必要人員(スタッフ)を手配し、現場の運営を担います。
公演が円滑に回るよう、会場の仕込みから本番の運営、その後の撤収までを行います

応募資格
・18歳〜40歳 / 学歴・経験不問
※経験者優遇
エンターテイメントを通じて、人々を幸せにしたいという想いを持っている方。

勤務地
・都内
※業務内容に応じてリモートワーク可能です。

給与
直接お問い合わせください。

※基本給は経験や職歴により変動があります。
※休暇について雇用形態により決定しています

問い合わせ先
info@illuminus-creative.net (株式会社ILLUMINUS採用係)

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